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口腔アレルギー症候群

皆さまこんにちは。
時折感じるさわやかな風に、秋を感じるようになりました。

秋にはコスモスや金木犀など、季節の花も多く見られる時期ですが、実は秋にも花粉が飛んでおり、「秋の花粉症」を患っている方もいらっしゃるかと思います。
今回は、花粉症との関わりが注目されている「口腔アレルギー症候群」についてお話ししようと思います。

●口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)とは?

1987年 Amlotらにより提唱された概念であり、何らかの食材によって口腔内や咽頭にアレルギー反応が出る病気とされています。
果物や生野菜に含まれるアレルギー反応の原因となるたんぱく質(アレルゲン)が、口の中の粘膜に触れて起こり、体内のIgE抗体(アレルギー物質に対する抗体)が関係しています。
また、花粉症の人が果物や野菜を食べた場合に際に生じるものを、『花粉-食物アレルギー症候群(PFAS:pollen-food allergy syndrome)』と呼ぶようになりました。

●どんな症状が起きる?

果物や生野菜を食べた直後から数分以内に唇や舌、口の中の粘膜、咽頭にかゆみやピリピリとしたしびれ、むくみなどが誘発されます。
ごく稀に、アナフィラキシーショックと呼ばれるショック症状を起こすこともありますが、多くは食後しばらくすると自然に消えるものがほとんどです。

●花粉症と食べ物にはどのような関係がある?

花粉症は、口腔アレルギー症候群の発症と同じく、目や鼻に入ってきた花粉からアレルギー反応の原因となるタンパク質(アレルゲン)が出されることで、目の痒みや鼻水といった症状を引き起こします。
花粉と食べ物の一部の間で、このアレルゲンの構造が非常に似たものがあることから、花粉症の人で口腔アレルギー症候群が発症しやすくなっていると考えられます。

●どんな食べ物で症状が出やすい?

リンゴやモモなどのバラ科の果物や、メロンやスイカなどのウリ科の果物で起きやすいとされています。
また、以下の図のように、反応する花粉の種類によって、口腔アレルギー症候群の原因となる果物や野菜は変わってきます。

●子供に発症は多い?

年齢層の幅は広く、大人になってから突然症状が出ることもあります。
また発症にも個人差もあるため、特定の食べ物で違和感があれば専門医の受診をお勧めします。

●対処法は?

根治療法は無く、症状の出た食べ物を避けることしかできません。
しかし、原因となるたんぱく質(アレルゲン)は熱や消化で変形し、発症しにくくなるため、加熱や加工で食べるなどの工夫を行うことで対処することが可能です。
症状が出た場合には、抗ヒスタミン薬が有効とされています。

いかがでしたでしょうか?
今回、「口腔アレルギー症候群」についてお話ししましたが、お口の粘膜の異常は、口腔アレルギー症候群以外にも病気が考えられます。
何かおかしいな?と思いましたら、お気軽に歯科医院にご相談ください。

歯科医師 奥村 知里

参考文献:「口腔アレルギー」治療法は.朝日新聞.2022-05-04.p.16.
https://www.tanijiri.com/specialty/oas
https://www.kyowakirin.co.jp/kahun/about/oas.html
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=14

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健康寿命と矯正治療

皆さま、こんにちは。
春の訪れが早く、桜の開花も昨年よりも6日も早く発表されました。
新型コロナウイルスを巡る規制緩和も広がり、通常とは言えないまでも3年ぶりにお花見が楽しめる機会が増えそうです。
まだまだ季節の変わり目ですので、体調を崩されないようにご自愛ください。

日々診療していると近頃、矯正治療を希望される成人の患者さんが増えてきたように感じます。
コロナ禍でのマスク生活では窮屈な生活を余儀なくされていましたが、口元をマスクで隠しているこの機会に、今まで二の足を踏んでいた矯正治療に踏み切る方が多いのではないかと思います。
そこで今回は健康寿命の側面からみた矯正治療の利点をお話したいと思います。
矯正治療は審美的な問題を解決することはもちろんですが、かみ合わせを治すことによって高齢になっても歯を残し健康寿命の延伸にもつながると考えられます。

健康寿命

2019年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。
一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2019年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。
平均寿命と健康寿命の差は10歳以上あり、健康寿命の延伸が生活の質の向上につながると考えられます。

皆さんは「8020運動」という運動はご存じでしょうか?
日本歯科医師会や厚生労働省が提唱している運動で、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという運動です。
高齢者になった時に自分の歯を残し健康な生活を送ること目的としています。
(提唱した当初(平成元年)には8020達成者は全体の10%に満たないとされていましたが、現在では50%以上が達成しています。)

8020運動

「80」は、提唱当時の日本人の平均寿命(平成元年)、「20」は「自分の歯で食べられる」ために必要な歯の数を意味します。
今までに行われた歯の本数と食品を噛む(咀嚼)能力に関する調査によれば、だいたい20本以上の歯が残っていれば、硬い食品でもほぼ満足に噛めることが科学的に明らかになっています。
食物を満足に噛めるということは健康寿命にも関係していて老後健康な歯が多いほど認知症や寝たきりになるリスクが低くなるとこが分かっています。

東京都文京区と千葉市で8020達成者を精査したところ、どちらの調査でも「不正咬合」である反対咬合と開咬がいなかったとの報告があります。
反対咬合や開咬は不正咬合の中でも特に奥歯に負担がかかるかみ合わせで、長年負担がかかっていると奥歯から喪失していき残存歯の減少につながると考えられます。

不正咬合

歯並びや噛み合わせの状態が良くない状態の総称。
歯の位置や歯列弓、上下の噛み合わせなどから起こり、放置すると日常生活に支障が出る場合がある。
正常ではない咬合(かみ合わせ)のことです。

不正咬合の種類

叢生(そうせい):歯がアゴに入りきらないでガチャガチャに生えている状態 歯がならぶ場所=骨の大きさとそれぞれの歯の大きさとの間のアンバランスでこのようになります。
歯みがきの時に歯ブラシが行き届かずに汚れが残りやすく、虫歯や歯周病の原因となります。

反対咬合(はんたいこうごう):下の歯が上の歯より前に出ている噛み合わせです。
上下の前歯の傾きに問題がある場合と下のアゴが大きすぎたり上のアゴが小さすぎることによる場合とがあります。

開咬(かいこう): 噛んできても、特に前歯が噛み合わない状態です。
前歯で食べ物をうまく噛みきることができないだけでなく、正しい発音ができないことが多いです。

上顎前突(じょうがくぜんとつ):上の前歯が強く前に傾斜していたり、上の歯ならび全体が前に出て噛んでいます。
また下のアゴが小さかったり、後ろにあることで見かけ上、出っ歯にみえることもあります。
この状態では、口を楽に閉じることができませんし、顔のケガで前歯を折ったり、くちびるを切ったりしやすいです。

矯正治療によって歯並びが良くなれば磨きやすくなり、歯を失う2大要因である、虫歯や歯周病のリスクを下げることができると考えられます。
また、上顎前突による前歯の破損のリスクを下げることや反対咬合や開咬のような奥歯に負担がかかるような不正咬合を改善することによって高齢者になった時の歯の喪失のリスクを下げることが期待できると考えられます。
歯並び、噛み合わせを治すことは歯の健康を保ち、高齢者になった時に健康な歯で物を食べられることによって、健康寿命の延伸にも深く関わってくると考えられます。
もちろん矯正治療にはメリットだけではなくデメリットもあり、矯正治療をはじめるためには詳細な検査をして個人個人にあった治療方針をたてて進めていく必要があります。

そろそろマスク生活も終わりが来そうな時期にはなってきましたが、この機会に一度ご自身の歯並びに関して歯医者に相談してはいかがでしょうか。

矯正歯科医 片岡 烈

(参考文献)
・日本矯正歯科学会HP
・e-ヘルスネット(厚生労働省)

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低フォスファターゼ症と乳歯

厳寒の候、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
昨年来、新型コロナウィルスにより新しい生活様式への適応を求められ自粛を余儀なくされておりますが、ワクチン接種が始まったことで少しずつ状況緩和への見通しが立ってきているように感じられます。

この状況が一日でも早く終息へ向かいますことを心からお祈り申し上げます。

さて皆様は『低フォスファターゼ症(HPP)』という病気をご存じでしょうか?
体内のアルカリフォスファターゼ(以下ALP)という酵素が正常に働かなくなることで
骨や歯が弱くなるのが特徴的な遺伝子の病気です。
日本においての重症の方は15万人に1人ほどで症状の軽い方を含めると5万人に1人の発症率と言われています。

(ALEXION_読売新聞記事_180627 (hpp-life.jp)

〇低フォスファターゼ症の病型(発症時期と特徴)

低フォスファターゼ症とはお母さんのおなかにいる頃から発症する方もいれば成人になってから発症する方もおり発症年齢は様々です。
体の骨が弱い為に生きることが難しい重症の方からほとんど無症状のまま過ぎる方まで重症度もおいても様々です。
こうした発症時期や重症度によって現在6つの病型に分類されています。

1.周産期重症型 最も重症な病型で、出生時に四肢短縮、頭囲の相対的拡大、狭い胸郭を認める。X線で、全身骨の低石灰化、長管骨の変形、などを認める。
2.周産期軽症型:骨変形などから胎児期に診断された低フォスファターゼ症症例のなかに、良好な骨石灰化を認める予後良好な病型。日本人例では、ALP遺伝子F310Lとの関連が指摘されている。
3.乳児型: 生後6か月までに発症する。乳児期に死亡する症例もある予後不良な病型である。
4.小児型:小児期に発症するタイプで重症度はさまざまである。乳歯の早期喪失を伴うのが特徴である。(生後6か月から15歳くらいの発症)
5.成人型:成人期おもに中年期になってから発症するタイプで病的骨折、骨痛によって気づかれる。
6.歯限局型:骨に病変が限局するタイプである。乳歯の早期脱落などを認める。 

参照https://www.shouman.jp/disease/details/15_02_005/ 

〇歯への影響

今回は歯に異常が出ることを特徴的とする小児型、歯限局型にクローズアップしてご紹介させていただきます。
通常乳歯は生後6~8か月で生え始め、3歳前には20本の歯が生え揃います。
その後、6歳以降から永久歯が生え始めおおよそ12歳には28本の永久歯が生え揃います。つまり6~12歳が生え変わりの時期となります。
ところが低フォスファターゼ症の場合、4歳前に乳歯が抜けてしまうことがあります。
歯の抜け方としては、通常であれば乳歯の根が吸収されて抜けてきますが、根ごと抜けてしまうのが特徴です。

乳歯が早期にぬけてしまった場合、以下の問題点が挙げられます。

✓ 歯並びや咬み合わせ
乳歯は永久歯が生えてくるスペースを確保する重要な役割があります。
乳歯が早期に抜けてしまった場合永久歯の歯並びや咬み合わせに影響が出ます。 

✓食べる、話す
乳歯が早期に脱落してしまうと食事や発語機能の獲得時期に影響を及ぼします。

✓見た目
歯がないという見た目の問題に対する心理的な問題がでてきます。

〇治療法

現在では残念ながら歯の早期脱落に対する根本的な治療法は確立されておりません。
その為グラグラしている歯はできるだけ長持ちできるよう歯肉の状態を良好に保つ歯周治療を行います。
また抜け落ちてしまった乳歯の部位に対しては3歳過ぎから義歯(入れ歯)を作り問題点の改善をはかります。
しかし自分の歯と同じよう噛むことは難しく、また歯がないことでからかわれたり、頑張って義歯をしようしているのに嫌な思いをする可能性もありお子さんが入れ歯を受け入れるまで時間がかかるなど課題があります。

低フォスファターゼ症そのものの治療としては、2015年からALP(アスホターゼアルファ 商品名:ストレンジック)を注射で体内に補充する『酵素補充療法』が日本で認可され根本的な治療として行うことができるようになりました。
ストレンジックによる治療は欠乏したALPを補充し、酵素濃度上昇と骨の石灰化障害を改善しそれによる重篤な骨格および重篤な病態と早期死亡を予防することを目的としています。
高価な治療となりますが、小児慢性特定疾患に指定されているため医療費助成制度が利用できます。
指定医が医療費助成の申請を行うことになっていますので、我々歯科医は小児科医と連携し治療を進めていく必要があります。

生きることができる病気になったからこそ、お子さんの歯の問題がより一層重要視されるようになりました。

〇まとめ

今後の課題として乳歯がなぜ早く抜けてしまうのかを明らかにし治療法を確立する必要があり現在日本においても世界に先駆け、研究が進められています。
低ホスファターゼ症の子どもたちへの先進的な歯科治療法の開発を(大阪大学大学院歯学研究科 小児歯科学教室・顎顔面口腔矯正学教室 2020/01/20 公開) – クラウドファンディング READYFOR (レディーフォー)

もし乳歯が早期に抜けてしまった場合は抜けた歯をご持参の上歯科を受診ください。
低フォスファターゼ症は進行性の病気であるため最初は歯に限局した症状がみられていても徐々に全身に現れる可能性があります。
その為歯の症状から早期に問題を発見し、定期検診を行うことで成長発育の管理をしていく必要があるのです。

歯科医師 小松リナ

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効果抜群!「筋膜リリース」

新緑が目にしみて心地の良い季節になりましたね、皆様いかがお過ごしでしょうか?

今回は、最近、簡単で効果抜群のストレッチ法として注目されている、『筋膜リリース』について少しご紹介しようと思います。

〈筋膜とは 〜第二の骨格〜とその役割〉

筋膜とは全身にある様々な筋を作っている膜の総称で、存在する場所により

・浅筋膜
・深筋膜
・筋外膜
・筋周膜
・筋内膜

といった名称がつけられています。

筋膜は筋繊維をまとめ筋肉の形を保つことで全身の形態や臓器の位置を維持しているといった点で骨格と同じような働きを持っているため第二の骨格と呼ばれることがあります。

筋膜の役割としては、

・体の形、姿勢を保つ
・体の動きをコントロール
・温度や触覚、圧力を感知するセンサー
・筋肉同士の連携をさせる司令塔

といったものが挙げられます。

〈全身の筋膜が硬くなることで生じる弊害〉

筋膜は名前の通り様々な筋を包んでいるため筋肉が収縮、弛緩をすると筋膜同士で滑走しスムーズに運動を行うことに寄与しています。
また筋膜は血管や神経の通り道になっているため、筋膜が硬くなり粘着性が高まってしまうと神経が圧迫され血流が悪くなり筋膜組織が酸欠となり、発痛物質が放出され、筋膜痛が生じます。
俗にいうコリによる痛みです。

〈リリースの方法〉

筋膜には圧、触、熱受容器が存在すると前項で紹介しました。
筋膜痛やコリの原因は血流不全による酸欠状態が原因であるとも説明しました。
つまりそれらの受容器に刺激を与えることで血流が改善し、筋膜痛等の改善につながります。
簡単な方法として、ストレッチやマッサージを行うことが効果的です、ストレッチやマッサージを行うことで固着してしまった筋膜を剥がし滑走させることで筋膜の滑りを良くすることが筋膜リリースと呼ばれるものなのです。

〈顔面の筋膜について〉

顔面には表情筋群、咀嚼筋群などなどの筋肉が所狭しと存在しています。
もちろんそれぞれの筋肉には筋膜が存在します。
代表的な例を挙げます。
顎関節症(http://www.chiyoda1st.com/2014/08/post-79.html)の咀嚼筋障害の症状に筋・筋膜痛といったものがあります。

また口呼吸の改善になると話題のあいうべ体操、こちらも顔面の筋肉のマッサージによる血流改善という点では筋膜リリースと関連しているのではないかと考えられています。

つまり筋膜リリースの効果をまとめると
・咀嚼筋が起因となる顎関節症の治療
・口呼吸の改善
・不定形等痛の寛解
・顔面のシワたるみのリフトアップ

など、様々な効果が筋膜リリースにあるということです。

〈顔面筋膜リリースの方法〉

方法としては巷にたくさんの方法が存在します。
今回は代表的な方法を2つほど紹介します。

両腕を方の高さまで上げ、手のひらが前に向くように肩甲骨を起き上がらせながら腕を立てます、手や富士が背中より後ろに行かないように注意です、そのまま10秒キープしましょう。
あごを引いたまま舌を斜め上に突き出して10秒キープしましょう。
口角をあげ最大級のスマイルを作って10秒キープ!
目も口もパーっと大きく広げて10秒キープ
今度は楽な姿勢をとり、あごの真ん中に指を3本おきましょう
モダイオラス(えくぼの部分)にむかって指を滑らせ30秒キープ
さらに引き上げて10秒キープ

これを朝、昼、夜の1日3回行いましょう。

〈あいうべ体操〉

・『あー』と口を大きく開く
・『いー』と口を大きく横に広げる
・『うー』と口を大きく、前に突き出す
・『えー』と舌を突き出し下に伸ばす

これを1セットとし1日30セット行うと効果があると言われています。

みなさんもぜひ試して、いろいろな効果を実感してみてくださいね!

歯科医師 渡辺知明

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星陵日記

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