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アーカイブ: 7月 2021

貴重な経験 in Deutschland
(ドイツの歯科事情)

皆さまこんにちは。
だんだん暑い日が続いていますが、体調など崩さずに元気にお過ごしでしょうか?
今年2月にWDAI(女性歯科インプラントアカデミー)で会員発表をさせていただきました。
コロナ時代のリモート発表という形で、なかなか楽しい体験をさせていただきました。

今回は全くインプラントと関係なく、学術的にもほど遠いテーマで、私がドイツで体験してきたことのお話になります。
正統派の留学とは違い、独自にドイツの一般歯科医院に潜入していった私の経験、および私が知り得たドイツの歯科事情を、皆さまにリラックスして読んでいただけたらありがたいと思います。

大学院を卒業後、一般開業医で臨床に携わっていた私に転機が訪れたのは、2011年3月11日の東日本大震災の時でした。
地震がきっかけで、突然夫の故郷のドイツへ移住することになりました。
ドイツ政府は、日本にいるドイツ人全員に直ちに日本を脱出してドイツに帰国するように喚起しました。
その後、平先生も励ましてくれたので、不安でいっぱいでしたが日本を離れることにしました。
そして、2011年の春から、ドイツ人の夫と共にノルトラインヴェストファーレン州のPaderbornという町に住むことになりました。

移民の国

ドイツに住んでみると良く分かるのですが、ここは世界で最も移民受け入れに力をいれている移民大国です。
ドイツでは移民の背景を持つ住民が、全人口の19%を占めるそうです。
政府が主催する移民用の語学学校には様々な国の方が集ります。
最も多いのがトルコ、次いでポーランド、ロシア、東欧、南欧、シリア、アフガニスタン、カザフスタン、コソボ、アフリカなどなど・・・
外国人の移入数の国際比較を見てみると、OECD加盟国の中で断トツ1位がドイツでした。
実は日本も4番目に位置していて意外な感じがします。

歯科医師の承認試験 (Approbationspruefung)

日本と同様に、超高齢化社会のドイツではすでに、労働力不足、特にエンジニアや情報技術関連、医師などの専門家不足が深刻な問題となっていました。
この問題を解決するためにドイツ政府は資格の承認試験を行い、有能な人材を国外から受け入れることに力を入れております。
私の住む町でも、多くの外国人医師たち(歯科医師はほとんどいませでした)が、この承認試験を受けに集まっていました。
承認試験に受かるためには、十分な知識と経験、および言葉が重要な条件になります。
私の場合は、まずドイツ語検定のB2レベルまで一般のドイツ語クラスで勉強しました。
その後は、医療従事者向けの承認試験対策クラスに参加したりなどして、試験対策をしました。
承認試験は1対2の面接方式でした。歯科に関する文章を読み、その後質疑応答がありました。
承認試験に受かってからは、地域の歯科医師会の会員になることができます。
そして、様々な研修会に参加することもできるようになりました。
残念ながら、私の住む町では、ドイツ語を母国語レベルで話すことのできない私にとっては一般の歯科医院で就職するのは非常に難しく、まずは見学からさせていただくことになりました。

ドイツの歯科医院

まず、ドイツの歯科医院を訪問すると、その環境の良さに驚きます。
清潔第一で、シンプルで無駄のないインテリア、そしてゆったりとした広さの完全個室が一般的です。
矯正歯科専門の大きなクリニックは例外的に個室ではありませんでした。
私がお世話になっていた医院では、ドクターが1人に対して完全個室の診療室が4部屋あり、さらに歯科衛生士が行う予防歯科用の診療室が2部屋ありました。
治療に使用する機材も最先端のものが揃っていました。

保険制度の違い

保険制度の違いは海外で医療にかかると良く分かります。
ドイツでは「歯科疾患は自己責任の病気」という前提があるため、公的保険でカバーされる治療の範囲がかなりに狭いです。
この認識はドイツのみならず欧州全体に共通したものです。
日本では、かなり広い範囲の歯科治療が公的保険でカバーされます。
このことは世界の標準からすると例外的です。
現在ドイツやその他の多くの国では、虫歯治療や歯根治療は保険適応外(または最小限の治療が一部適用)になっています。
歯科治療全般で機器や医療技術が著しく発達した現代では、高いレベルの治療が求められるに従いコストも増加したため、多くの国が歯科治療を公的保険から外すことになったそうです。
また、口腔ケア、定期的なクリーニングによってかなり予防できることが証明されたので、これらの口腔疾患は「自己責任の病気」として考えられるようになったことが根底にあるそうです。

ドイツの保険制度

ドイツでは、全て住民が法定健康保険システム(Gesetzliche Krankenversicherung)ないしは民間健康医療保険システム(Private Krankenversicherung)のいずれかに必ず加入しなくてはなりません。

大半の被雇用者には法定保険への加入が義務付けられていますが、月収がある一定額を超える被雇用者やフリーランサー、会社経営者の加入は任意となり、民間保険を選択することもできます。
法定保険料は収入に対する割合で決まる一方、民間保険では保障内容や加入時の年齢、既往歴などによって保険料が決まります。
歯科治療を受けた際の給付は、保険の種類、治療内容だけでなく、これまで定期的に歯科検診を受けていたかによっても左右されます。

Bonusheft

ドイツの法定保険の非常にユニークなシステムとして、Bonusheftがあります。Bonusは英語と同じくボーナス、Heftは冊子のことで、小さなパンフレットになっています。
これは、定期検診を受けていると治療費の給付が増額され、補綴物の料金が割引されるサービスです。
6歳以上18歳未満は年に2回、18歳以上は年に1回の歯科検診を受けると、このBonusheftにスタンプがもらえます。
このスタンプが継続された期間に応じて、法定保険の対象である治療を受けた際に給付される金額にボーナスと補綴物の割引が受けられます。

という訳で、多くのドイツ人にとって歯科の定期検診を受けることは常識です。
このような制度は日本でも真似したいですね。
定期的に歯科検診へ行くことへの励みになります。

ドイツの医院では治療終了時のお会計がありません。

ドイツの医科及び歯科医院では治療が終わると、患者さんは受付で次回の予約をとるだけで、その日のお会計はありません。
治療費は全て医師から保険会社への連絡により、処理されます。
必要な費用が発生した場合は保険会社から患者さんへ連絡が行き、支払いは銀行振込などで支払われます。
医院では会計の手間が省け非常にスマートな方法だと思います。

ドイツの歯科医院では署名しなくてはならない書類が多い

ドイツの歯科医院では自費診療を行う際、高額の医療費がかかることが多いので、あらかじめ治療に関する内容やプロセス、使用する材料などを詳細に説明したうえで見積書を発行する必要があります。
患者さんが説明を理解し、同意書にサインをしてから治療が開始されます。

ドイツ人の働き方

ドイツ人は朝早くから働きます。
だいたい、普通の医療系の診療所は午前8時から始まっていました。
通勤に行く前に、診療へ行く方が多いです。
私が見学させていただいていた歯科医院では、希望する患者がいる場合は、朝の7時から歯科衛生士さんによるクリーニング(Prophylax)プロフィラキシィを実施していました。
始業時間は早いのですが、終わる時間も午後5時ころと早いところが多かったです。
歯科医院でも、たくさんの歯科医師が働く規模の大きい歯科医院もあり、そこでは交代制にし、朝7時半から夜の9 時ころまで開けていました。
だいたい一人の診療時間は処置の内容にもよりますが、日本よりは長めにとっているようでした。
診療の内容は当然、自費診療が多いです。

ドイツ人は仕事が終わった後の時間を有効に楽しもうとします。
夜にスポーツジムに行ったり、友人宅に遊びに行ったりします。
なんとなく就業時間の長い日本とは異なり、ゆったりした時間を楽しむことのできるお国柄だなと思いました。
仕事とプライベートの時間をしっかり区別するところがドイツらしいところなのかもしれません。

最後に、日本では歯科医院に行くのは、何かお口の中に問題が発生した時だけと思っている方が多いようですが、実はそうではないのです。
特に問題が無くても、定期的な口腔内の検診とメンテナンスは非常に重要なことですので、常日頃から歯科医院をもっと有効に活用していただくことをお勧めします。

歯科医師 大庭美和

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