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星陵日記

歯の色は何色?

皆さまこんにちは。梅雨が明け夏本番になりました。
猛暑続きの毎日ですが、皆さまお身体の調子はいかがでしょうか。
夏と言えば海水浴や花火大会、夏祭りなど様々な行事がありますよね。
そんな時に白い歯で笑えたら良いなと思ったことはありませんか?
今回は歯を白くするホワイトニングについてお話しようと思います。

●なぜ歯は黄ばむの?
●ホワイトニングで白くなるのはどういう原理?
●ホワイトニングで白くなる歯・ならない歯の特徴は?
そんな疑問に答えていきたいと思います。

●なぜ歯は黄ばむの?
歯の色が変色する原因には様々なものがありますが、加齢変化で歯が黄ばむ原因には大きく分けて以下の2つがあります。

①着色によるもの
②加齢変化により歯の黄色い部分が濃くなること

①この図は歯の断面図になります。
歯の頭の部分(歯冠)の表面を覆っているのがエナメル質と言われ、体の中で最も固い組織からできています。
そんな固いエナメル質ですが、目には見えない小さな傷や亀裂、凹凸があります。
飲食物の色素はこういったエナメル質表層部分に入り込んでしまいます。
さらに歯には再石灰化という機能があり、色素がエナメル質の内部まで取り込まれてしまいます。

②皆さんは人間の歯の色は何色?と聞かれた時どんな色を想像しますか。
多くの方は、白色を思い浮かべるのではないでしょうか。
歯の色調には、先程説明したエナメル質と象牙質の二層構造という関係性が深く関わってきます。
それぞれの特徴を見ていきましょう。

エナメル質の色調は灰白色~淡黄色で半透明となります。
実はそれほどくっきりとした白色ではなく、少し透け感があるのが特徴です。
そのためエナメル質の内側にある象牙質の色調が影響しやすくなります。
象牙質は名前の通りに象牙色(アイボリー)で黄色味かかっています。
エナメル質が薄くなると象牙質の黄色味が目立ちやすくなります。
さらに象牙質は加齢変化により第二象牙質という新たな象牙質が作られたり、象牙細管という管状の構造が閉塞されたりすることにより色がより濃く見えてきます。
歳をとると歯が黄色になるというのは、こういった歯の構造変化にも原因があります。

●ホワイトニングで白くなるのはどういう原理?
ホワイトニングは2つのメカニズムで成立しています。

①着色物質を分解してその色を除く
②歯の組織構造を変化させて、白く見えるようにする

①歯科で使用する漂白剤は過酸化水素となります。
過酸化水素は光・熱や化学触媒(酸性、アルカリ性)などの刺激が加わることで、活性化しヒドロキシラジカル(不対電子)を発生させます。
この状態のOH基は非常に不安定な状態となります。
したがって、OH基は安定化するために有機性着色物質から電子を奪います(酸化作用)。
こういった化学反応で着色物質が脱色・分解され無色化が起こります。

②着色物質が除かれることで、エナメル質の透明感がでます。
しかし、半透明なエナメル質の下の象牙質の色が透けてしまい、歯は白く見えません。
歯を白く見せるためには象牙質の色を覆い隠せるようにエナメル質の構造を変化させる必要があります。
エナメル質は、エナメル小柱という柱状の構造物が無数の束になってできています。
過酸化水素から発生した活性酸素が、エナメル質表層のエナメル小柱の構造を角状から球状に変化させます。
球状になることで人の目に入る反射・散乱光が増えて白く見えるようになります。
ホワイトニングでは、単に着色の原因物質を化学的に分解するだけでなく、歯の構造が物理的に変化して生じる「色の見え方の変化」も利用することで歯を白くしています。

●白くなる歯の特徴
白くなる歯は、一言で言えば健康な歯です。
虫歯がなく、神経のある歯は基本的に白くすることが可能です。

●白くならない歯の特徴
白くならない歯はいくつかあります。

①被せ物や詰め物の部分
ホワイトニングで白くできるのは天然歯で、金属やセラミック、樹脂などの人工物の部分は白くできません。
詰め物がある歯を白くしたい場合は、まずホワイトニングで白くした後に、その色調に合わせて詰め物をやり直す方法があります。

②金属によって変色した歯
銀歯などの金属を使用している場合は金属イオンが溶け出て、歯が黒ずんでしまう事もあります。
こういった場合もホワイトニングでは白くできません。

●白くなりづらい歯

①無髄歯、失活歯

歯の神経を取った歯や死んでしまった歯は通常のホワイトニングでは白くできません。
こういった場合は、歯の中に薬剤を使用するウォーキングブリーチという方法もあります。
濃く変色している象牙質に直接作用させるので、高い漂白効果が期待できます。
通常、目的の白さを獲得するまでには、変色の程度によっても異なりますが、漂白剤を数回、新しいものに交換する必要があります。

②テトラサイクリン歯

テトラサイクリン系抗生物質により変色した歯は、歯の内部まで変色しています。
そのため重度の変色の場合は、歯の表面に塗るホワイトニングでは白くすることが難しいとされています。

③加齢による黄ばみ
加齢変化によりエナメル質が薄くなり、象牙質の黄色が目立ちやすくなります。
若年者と比較するとホワイトニング効果が発現するまで時間がかかります。

④フッ素コーティングされた歯
ホワイトニング前にフッ素コーティングすると、ホワイトニング剤が浸透しにくくなります。
そのためフッ素コーティングする場合はホワイトニング後に行うのが良いでしょう。

⑤エナメル質が薄い歯
エナメル質形成不全症や歯の酸蝕症などエナメル質が薄く象牙質の色が出やすい歯は、ホワイトニング効果が得られにくい傾向があります。

⑥ホワイトスポット
歯の部分的な白斑をホワイトスポットと言います。
ホワイトニングによりホワイトスポットが強調され、歯の色調が不均一になります。
その場合は、ホワイトニング後に色調を合わせるような治療が推奨されます。

⑦犬歯や歯茎のきわ
こういった部分は象牙質の色調が出やすいため、他の部分と比べ白くなりにくい傾向がありますが、数回ホワイトニングを繰り返すことで改善が可能です。

今回のホワイトニングの説明は以上になります。
ホワイトニング最大の利点は歯を削らずに白くできることです。
歯の色が気になる方は、お気軽に当院の歯科医師や歯科衛生士にお声かけください。

歯科医師 岡村 梓文

参考文献
・日本歯科医師会ホームページ.“インプラント-歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020”https://www.jda.or.jp/park/trouble/white_02.html,(2024-7-17)
・千田 彰他編.保存修復学 第7版.医歯薬出版,2019.
・加藤 純二他編.これで納得!デンタルホワイトニング.医歯薬出版,2012.

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インプラント治療ステップガイド

皆さま、こんにちは。
梅雨に入り雨に加え、むしむしとした暑さをも感じる季節となりました。
水分や栄養をしっかり摂り、体調等お気をつけてお過ごしください。

さて、皆さんは虫歯や歯周病で抜歯をするとなった時に歯が無くなった部分をどうやって治療するかご存知でしょうか?
もともと歯のあった部分に金属のワイヤーで人工の歯を固定する「部分入れ歯」や、抜いた歯の両隣の歯を削って連結した被せ物を入れる「ブリッジ」、歯肉を開き骨にインプラント体を埋めて被せ物をする「インプラント」の3つの治療法があります。

今回はこの中でインプラント治療について詳しくご説明したいと思います。

①インプラントの仕組み

インプラントはインプラント体、アバットメント、上部構造の3つから構成されています。
「インプラント体」とはフィクスチャーとも呼ばれ、顎の骨に植わる部分のことです。
「アバットメント」とは日本語で支台という意味で、フィクスチャーの上にある人工歯の土台となる部分のことです。
「上部構造」とは、クラウンのことで種類としては一般的な被せ物と同じです。

②インプラント治療の流れ

インプラント治療の大まかな流れは「診査診断」「治療計画立案」「軟組織・硬組織マネジメント」「外科手術」「補綴治療」です。

〈診査診断〉
まずインプラント治療を行うにあたり、患者様それぞれの口腔内軟組織の視診や清掃状態の確認、欠損部分と対顎とのクリアランスの確認、X線画像による顎骨硬組織密度や分布の画像診断等を行う必要があります。
X線画像上での硬組織内部と分布状態把握を行うことでインプラント治療の可否を決定致します。

〈治療計画立案〉
治療計画とは、インプラント体を顎骨のどの部分にどの角度で埋入するか、どういった素材を用いて補綴処置を行うか等を決めることです。
具体的にはX線CT撮影によって得られた3Dデータを用いて、専用のソフトを用いてパソコン上で計画を立てます。

X線CT撮影では普段のレントゲン画像と違い平面ではなく、立体的な骨の形・神経の通り道を観察することができ、インプラント治療時には必須のものになります。

この画像はCT画像です。
下顎の中を通る下歯槽神経の位置をマーキングし、3Dデータ上に印記し、上部構造の位置などを考慮しながらインプラント体の長さや埋入部位と方向、深度を決定します。

〈軟組織・硬組織マネジメント〉
インプラント治療でインプラント体を埋入するにあたり重要になってくるのは顎骨の高さや幅です。
顎骨の骨は外傷や歯周病などで失われるだけでなく、歯の喪失に伴い萎縮し、上顎では上顎洞に、下顎では下顎管(下歯槽神経等)に近接します。
骨の吸収によりクラウンインプラント比や上部構造形態にも影響し、隣接する天然歯との並びにおいても不調和が生じることになります。
もし、骨幅の不十分な状態で埋入を行ってしまうと、埋入後に骨吸収が助長されてしまう可能性もあります。

硬組織マネジメントの方法として、1.自家骨移植2.骨再生誘導法3.上顎洞挙上術(ソケットリフト、サイナスリフト)4.骨延長術5.スプリットクレフト等の方法があります。

左下臼歯部に骨補填を行い、
インプラント体埋入

また軟組織の状態も重要な治療項目です。
軟組織マネジメントにおいては見た目やブラッシングのしやすさ等が重要な項目となってきます。
インプラント周囲にしっかりとした幅と厚みをもった粘膜が存在すればインプラント周囲粘膜界面における組織剥離に抵抗でき、インプラント体をしっかりと保護することができます。
また上部構造と調和した適度な幅と厚みのある粘膜が存在することで審美的にも優れた状態となります。
軟組織マネジメントの種類としては一般的な歯周外科治療で行われるような遊離歯肉移植術や結合組織移植術が行われます。
硬組織だけでなく軟組織の状態も同時に加味し、計画立案することがインプラント治療を成功させるために不可欠となります。

  

〈外科手術〉
治療計画立案後はいよいよインプラント体埋入の外科手術となります。
インプラント体埋入手術には1回法と2回法があります。
1回法はインプラント体を埋入後、インプラント体上部あるいはアバットメントを粘膜上に露出しておき、粘膜を閉鎖せずにインプラント体と骨の結合を待ち、2回法ではインプラント体埋入後、粘膜を完全に閉鎖し口腔内に露出しない状態で骨との結合を待つ方法です。
2回法では骨との結合後、アバットメントを連結させる二次手術が必要となってきます。
1回法は二次手術が不要であることが大きな利点で、患者様にかかる負担が少なく、治療期間を短くすることができます。
その一方でインプラント体あるいはアバットメントが口腔内に露出していることでインプラント体に外力が加わるリスクがあります。
1回法は欠損部の骨の状態が良好で、二次手術時に軟組織マネジメントを併用する必要のない場合などに適用となります。

2回法ではインプラント体は粘膜に覆われ口腔内に露出しないため、インプラント体の安静が確保できることが大きな利点です。
一方で二次手術が必要となるため1回法と比較して侵襲が大きくなってしまいます。
2回法はインプラント埋入時の固定が獲得できない場合や骨造成が必要になる場合に適応となります。

このように2通りの方法があり、患者様の口腔環境または体調等を鑑み、慎重に術式を選択していきます。

〈補綴治療〉
インプラント体を埋入後、アバットメントを装着し、型取り後に上部構造を作成・装着し、インプラント治療が一通り終了します。
上部構造とインプラント体との連結方法として、スクリュー固定式とセメント固定式の二種類が存在します。
それぞれ利点欠点が存在しますが、状況に合わせて選択します。

スクリュー固定式では上部構造とインプラント体とを小さなスクリュー(ねじ)を用いて固定します。
セメントを固定に用いないので、高い適合が求められるためインプラント体との適合性良好です。
また、容易に取り外しができるためメインテナンスがしやすいのも大きな利点です。
一方、スクリューを通す穴(アクセスホール)が上部構造咬合面に存在するため、アクセスホールを封鎖したとしてもセメント固定式に比べると審美性に劣るのが欠点です。

セメント固定式では上部構造とインプラント体とをセメントを用いて固定します。
スクリュー固定式と異なり、上部構造にアクセスホールが存在しないため審美性に優れます。
一方、仮着用セメントを用いるため維持力コントロールが難しいです。
また、あふれたセメントを取り残す可能性もあり、セメントがインプラント歯周炎の原因にもなる可能性があることが欠点と言えます。

以上のことから現在では、取り外しができメインテナンス性にも優れるスクリュー固定式の固定方法が主流になりつつあります。

 

③油断できない!インプラント治療のその後

インプラント治療で大切なのはメインテナンスです。
インプラント治療というのは、異物を生体内に埋入し、上皮を貫通させ口腔内に露出させるといういわば病的な状態を保つという特殊性から、定期的なメインテナンス・リコールが重要になります。
5年以内に起こるインプラント治療後の併発症で多いものは「歯冠前装部の破折」や「インプラント周囲炎や軟組織トラブル」、「スクリューの緩み」等が挙げられます。
特にインプラント周囲炎になってしまうと、インプラント周囲の軟組織の炎症や骨の進行的な吸収が起き、最悪の場合インプラント体を除去しなければならなくなってしまうこともあります。
ブラッシング指導や機械的クリーニング、プロービング検査、抗菌療法、エックス線検査などを行い、インプラント周囲軟組織の初期病変を早期発見し、対応できることが大切です。

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インプラント治療の流れとメインテナンスについて説明いたしました。
ただ埋めるだけではなくしっかりとした術後管理が必要となります。
歯科医師だけでなく、患者様の日ごろの歯ブラシやフロスをしていただくことで共にインプラントを維持していきます。

長くなりましたがインプラント治療の概要は以上のとおりです。
インプラント治療のほか、入れ歯やブリッジ等につきましても、何か分からないことがありましたら、いつでもご質問ください。

歯科医師 濱田 崇人

参考資料
・日本歯科医師会ホームページ.“インプラント-歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020”.https://www.jda.or.jp/park/lose/index19.html,(2024-6-3).
・赤川 安正他編.よくわかる口腔インプラント学 第4版 .医歯薬出版,2023.
・宗像 源博.エビデンスに基づいたインプラント治療・骨造成: Early Failure回避のためのコンセプト.医歯薬出版.2024,

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歯周病を治して長生きしよう!!

皆さまこんにちは。
6月に入り木々の緑が色濃く美しい時期になりましたね。
日差しも強くなり、初夏の気配を感じる今日この頃ですが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
この時期は、新年度の疲れが出やすい頃でもありますので、どうかお身体を大切になさってください。

本日は、最も多い口腔疾患『歯周病』についてのお話しをさせていただきます。

《歯周病とは??》
歯周病原細菌と呼ばれる細菌の感染によって引き起こされ、歯を支える歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)に炎症が起こる病気です。

《なぜ歯周病が起こるのか??》
もちろん歯磨きをしないことは原因の一つですが、それだけではありません。
生活習慣や、さらには細菌に対する患者さん固有の感受性も大きく関わってきます。

《歯周病と全身の関わり》
歯周病は局所的な疾患ですが、歯周ポケット内の感染からいくつかの経路を経て、全身へと波及していきます。
経路のうち、1つは細菌感染の波及(口腔細菌の直接的作用によって引き起こされる、口腔以外の場所での菌血症や感染)、もう1つは歯周病の炎症反応が全身の炎症に影響をもたらすパターンです。

健康な時は、歯肉構内上皮な局所自然免疫は、自然なバリアーとして機能し、細菌の侵入を予防します。しかしながら、歯周病になるとバリアーとして機能しなくなり、細菌の入口となってしまいます。
特に、菌血症は、歯磨き・食事・口腔内診査・歯内治療の機械的な手段で悪化することがあります。

《歯周病新分類の登場》
従来の歯周疾患分類はArmitage が 1999年に報告しました。この分類では、「過去と現在」のみを反映していました。
18年の年月を経て、今回の「歯周病新分類」は、従来の「過去と現在」を反映する役割を担うステージ分類に加え、疾病活動性やリスクを示すグレード分類が、「未来」の進行リスクを示唆しています。
また、新分類の最も大きな変更点として、歯周病に影響与える全身的なファクターとして、「糖尿病」と「喫煙」が含まれていることです。

《歯周病と糖尿病の関係》
糖尿病とは、インスリンの分泌量の低下やインスリンの感受性の低下などのインスリン作用不足によって引き起こされる高血糖状態を特徴とする代謝症候群です。
糖尿病の概念として、

①高血糖で代表される特徴的な代謝異常
②その原因としてのインスリン作用の不足
③代謝異常が続くと特有の合併症が起こる

など、大きく3つの特徴があります。
糖尿病によって高血糖状態が持続すると、様々な合併症を引き起こす事は多く周知されています。
糖尿病の合併症には感染症も挙げられ、免疫細胞の機能の低下などによって感染状態になる歯周病も感染症の1つです。

歯周病は細菌感染がトリガーとなる炎症であり、糖尿病は先天要因を除くと、肥満、食生活、運動不足などによる環境因子が作用し、全身の慢性的な炎症がトリガーとなって、インスリンの抵抗性が現れる代謝性疾患である「炎症」を共通因子として、2つの疾患が双方に影響を及ぼし合います。

《歯周病が全身の炎症状態を亢進させると??》
歯周病が起きると、どのように血糖値に影響及ぼすのでしょうか?
歯周病が発生する過程では、炎症サイトカインや炎症伝達物質が産生され、それらの血中濃度は有意に上昇します。
インスリンを受け取る反応が鈍くなり、細胞表面のゲートが開かず、細胞が血中のグルコースを細胞内に取り込むことができなくなり、血中グルコースの濃度が上昇します。
この状態がインスリンが正常に機能していない状態で、糖尿病状態をさらに進行させるだけでなく、心血管疾患・アテローム性動脈硬化・周産期合併症・関節リウマチ・肺炎・慢性腎臓病・認知症・がん、など全身の病気との関わりがあります。
高血糖状態が続くことは、全身の免疫反応のバランスを壊して、さらなる炎症を引き起こしているのです。

《歯周病とどう向き合っていく??》
あらゆる病気と相互関係にある歯周病ですが、その疾患やリスクとなる疾患(高血圧や肥満など)をまず改善させることが必要です。
各々の疾患の治療・生活習慣改善指導と同時に、口腔ケアをしていくことは悪化のリスクを下げることができます。

つまり、食べることは、生きることにつながります。
食べるためには口腔内が良好な状態であることが重要になります。
新生児からお年寄りの方皆さん、口腔内に症状が出る前に、定期検診をして健康な生活を長続きさせましょう。

歯科医師 松井玲奈

参考文献
・木村 英隆他編.特定非営利活動法人日本臨床歯周病学会.歯周病と全身疾患: 最新エビデンスに基づくコンセンサス.デンタルダイヤモンド社,2023.
・村上 伸也他編.臨床歯周学 第3版.医歯薬出版,2007

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気になるお口の臭い

皆さま、こんにちは。
もう気づけば春の訪れを感じる季節となり、新生活を始める方も多いことでしょう。
新しい環境に胸踊らせつつ、不安に感じることも少なくは無いと思います。
感染への配慮はしつつも、長らく続いていたマスク生活も徐々に薄れつつある今、改めて自分の口周りの状態について見直すこともあるのではないかと考えます。

本日は「口臭」をテーマに少しお話させていただければと思います。
皆さんは自分の口臭について、気になる瞬間はありますでしょうか。
コロナの影響でマスク着用時間が長くなり始めた頃に、口のネバつきが増え、一度は心配になったことがあるのでは?と筆者は勝手に想像しております。
口臭の原因は様々であり、喫煙習慣、全身疾患、口腔乾燥や口腔内の清掃状態、歯周病等々が挙げられます。
他の人から特に指摘はされたことはないが、なんとなく不安を感じているという方もいらっしゃいます。
そもそも、口臭は自分で感じにくいという点が、1つの難しいポイントだと思います。
マスク着用は、口呼吸の頻度増加による口腔乾燥と、自分の息が外に出づらいという点が口臭への懸念と繋がっていると考えられます。

「口臭を人に指摘された」、もしくは「自分で気になる」と感じたとき、まず原因を疑うのは、息の出口である口腔内の環境です。
我々歯科では口臭の悩みについて、患者様からご相談を受けることもありますが、歯科では口臭をどう診断しているのか、どう対応しているのかを簡単にまとめてご紹介いたします。

まず診断に関してですが、問診、質問票等に加え、特徴的な検査方法が大きく分けて2つあります。

①人の嗅覚を使う
②測定機器を使う
の2つです。

①は口臭官能試験というもので、手順はシンプルに、第三者に口臭を嗅いでもらい、0~5の6段階評価を行うものです。
原始的ではありますが、後述する現在の小型機器では測定されない成分も含めて評価可能であるため、一番簡便かつ実用的で総合的な評価が可能と言われています。

②の機器にはいくつか種類があり、大学のような大型施設に配置してある口臭測定用ガスクロマトグラフィーといったものから、オーラルクロマ(エフアイエス株式会社)、ブレストロン(株式会社ヨシダ)のように小規模なクリニックでも使用可能な小型の口臭測定器があります。

オーラルクロマ 
((株)日本歯科商社 商品購入ページより参照)

【測定時間わずか30秒、どこでも測定できる口臭測定器】
小型・軽量で持ち運びもラクラク。測定ホースが1mあり、チェアサイドでもカウンセリングルームでも場所を選ばず測定できます。測定時間もわずか30秒で患者さんを煩わせません。

ブレストロンⅡ
((株)ヨシダ 商品情報ページより参照)

それらの機器は全て、口臭の主な原因物質とされている揮発性硫黄化合物(VSC)をターゲットに計測しており、その中でも硫化水素[H2S]、メチルメルカプタン[CH3SH]、ジメチルサルファイド[(CH3)2S]の3つが項目として挙げられます。
硫黄の匂いがあまり心地の良いものではないことは想像しやすいと思いますが
一般的に

硫化水素[H2S]:卵の腐ったような匂い
メチルメルカプタン[CH3SH]:魚や野菜の腐ったような匂い
ジメチルサルファイド[(CH3)2S]:生ゴミのような匂い

といったように、少し異なるニュアンスで表現されています。
(イメージしづらいかもしれませんが・・・)
これらの総量や、一部の機械では3つのバランスを測定することにより、口臭の原因を予測することが可能となっています。
例として、通常、硫化水素とメチルメルカプタンが総量の8割を占めているのですが、
この2つのバランスは

舌の汚れ(舌苔)が原因 → 硫化水素 > メチルメルカプタン
歯周病が原因      → 硫化水素 < メチルメルカプタン

以上のような傾向があるとされています。
また、ジメチルサルファイドが高値を示した際には、口腔内のみでなく腎不全などの全身的な要因が存在する可能性を示していると言われています。

検査結果により出た数値と、問診や質問票、口腔内の状況から総合的に判断して、診断を出すことになります。

次に歯科がどう対応しているかについてです。
口臭は、舌苔が原因となっていることが多く、その殆どが舌清掃による舌苔除去で改善すると言われています。
もちろん普段の歯磨きによるプラークコントロールや口腔乾燥への対応も重要となっています。
一方、歯周病が原因となっている場合は、重症度にもよりますが舌苔と同じく自分自身でのプラークコントロールに加え、歯石除去やポケット内の洗浄と、重症であれば歯周外科手術などが適応となるため、すぐ根本が解決して完治とまではいかないかもしれません。
しかし、ある程度短期間での症状改善が見込める可能性は十分にあります。
また、全身状態の関与が示唆された場合は、内科消化器系や呼吸器系などの医科への紹介を行う必要があります。
腎臓や肝臓の機能不全だけでなく、内服している薬剤が関与している可能性もあるため、再度身体の状態を確認することが大事になります。
口臭の原因が複数関与している際は、歯科での診察も並行して行うケースも考えられます。

前半に述べたように口臭は自覚することが難しく、あくまで他人の客観的な評価によるものであるため、不安に陥りやすいという側面があります。
人に直接相談しづらい症状ではありますが、口臭から、普段見えていなかった身体のサインを読み取ることができる可能性がありますので、なるべく1人で悩みすぎず、歯科等の医療機関で相談することをおすすめいたします。
原因や状態の程度が把握できると、気持ちもかなり楽になると思います。
お悩みの方は、いつでも気軽にご相談ください。

歯科医師 白井 健太郎

参考文献
1)東京医科歯科大学 歯科東京同窓会報 No.201.
医歯学総合研究科 健康推進歯学分野 財津 祟.p40-43

2)口臭.MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/

3)株式会社日本歯科商社.オーラルクロマ
https://www.dentalsupply.co.jp/product/detail_303.html

4)株式会社ヨシダ.ブレストロンⅡ
https://service.yoshida-dental.co.jp/ca/series/10757

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口が乾く 口腔乾燥症

皆さま、こんにちは。
日差しが春の訪れを感じる季節となりました。
同時に花粉などの影響により乾燥によるお肌トラブルに悩まされてる時期でもありますね。
今回はそんな乾燥にまつわるお話をさせていただきたいと思います。

「最近お口の中が、 乾いたな…」 と感じることはないでしょうか?
現代では高齢化社会に伴い、 口腔乾燥感を主訴に来院される患者様が増加しています。
疫学的には、 全高齢者のうち12 ~39% の罹患率があると言われています。
次の図は年齢別口腔乾燥自覚度を示します。

では、 実際に口腔乾燥症とはどういったものなのでしょうか?

●口腔乾燥症の概念と症状

口腔乾燥症とは一般的に「口腔内の水分減少により、 直接的または間接的におこる一連の口腔内におこる不調」 と定義されます。
臨床的には、 唾液の分泌量そのものが低下している唾液分泌低下症(SGH) と唾液分泌量にかかわらず 口腔乾燥感を感じるものdry mouth の大きく二つに分けられます。
症状として直接的なものでは口腔粘膜の感覚異常、 味覚異常、 唾液の粘稠感などです。
また、 間接的なものでは飲み込みにくさ、 噛みにくさなど様々です。
それらによって、 口腔乾燥でQOL が低下する可能性は否定できません。

●口腔乾燥症の原因

口腔乾燥症の多くが多因子性疾患であることから、 口腔乾燥症と断定することは難しいこともあります。

・加齢により生じたもの
・高血圧症、 糖尿病、 シェーグレン症候群、 自己免疫疾患などの全身疾患
・唾液分泌に影響を及ぼす抗ヒスタミン薬、 抗うつ薬、 抗精神病薬
・放射線治療による晩期障害
・ストレス
・水分減少

などです。
また、 昔に比べ柔らかい食べ物を好んで食べる風潮から、 咀嚼時間が減り口腔周囲の筋肉の衰えなども原因として挙げられます。

●診査

ムーカス試験

舌の表面とセンサ部分が平行になるよう押し当て3 回測定することで、 口腔湿潤度を測ります。

ガムテスト

10 分間ガムを嚙み、 分泌された唾液を容器に吐き出し計測します。

サクソンテスト
乾燥したガーゼを2 分間一定の速度で噛み、 ガーゼに吸収される唾液の重量を測定して唾液の分泌量を測定します。
その他の検査として、 唾液腺シンチグラフィー、 唾液腺造影検査などがあげられます。

●治療

口腔乾燥症による治療法はそれぞれの原因に対する原因療法が主体ですが、 それでも改善が見込めない場合では口腔湿潤剤を使用するなど対症療法も視野に入れ対応することもあります。
また、 唾液腺マッサージなどのセルフケアを行い、 直接刺激を与えることで効果の増大も期待できます。

耳下腺:耳の横を手指で後から前に向かって回すようにマッサージします。

顎下腺:親指の腹で舌を持ち上げるように押します。

舌下腺:指を下のアゴの骨の内側の柔らかい部分にあてて耳の下からアゴの下までを5ヶ所くらいを1~2秒押します。

原因に対する処置法は、

1.薬物性唾液分泌量の低下
薬が唾液分泌の低下を引き起こすことも多いです。
しかし、 明らかに服用している薬が原因だと分かっていても独断で中止するのではなく主治医と相談して、 服用薬の変更または、 量の調節を行うようにします。

2.ストレス
ストレスが原因の場合は、 心理士などによるケアが対象となります。
また、 心理的要因から薬が処方された場合、 唾液分泌量と関わりがあるかなど、 主治医と相談する必要があります。

3.唾液腺の器質的障害((放射線晩期的影響)
放射線により、 唾液腺そのものが破壊されてしまうことがあります。
その場合、 口腔湿潤剤などによる対症療法が基本となります。
また、 上記でも説明をしたように、唾液線の一部が機能している場合は、 セルフケアによる唾液腺マッサージが有効となります。

●最後に

口腔乾燥症により、 美味しい食事や友人との会話ができず、 個人のQOL に支障をきたしていませんか?
少しでも気になる場合は、 お近くの歯科医院を受診されることをおすすめします。

歯科医師 永井 綾香

参考文献
九州歯科大学生体機能学講座老年障害者歯科学分野 口腔乾燥症の病態と治療 柿木保明
ドライマウスと環境因子 日本歯科大学生命歯学部口腔外科学講座 日本歯科大学東京短期大学

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歯科と栄養の関わり

皆さま、こんにちは。
寒さが一段と厳しくなり、冷え冷えとした日が続いております。
冬は体調管理が難しいですが、温かい飲み物や栄養バランスの取れた食事でお体を温めて、お仕事や日常生活でお疲れが溜まらないよう、この寒い季節、どうぞ温かくお過ごしくださいませ。

さて、今回のテーマは「歯科と栄養の関わり」で少しお話させていただこうと思います。
我々にとって食事とは常に日々生きるために必要な要素であり、娯楽の1つとなっています。
いかに食事によって幸せを得つつ、自身の身体の調子を整えるかが、年を重ねるにつれてより大きな課題となっていくのではないでしょうか。
栄養バランスや量の話ですと、生活習慣病も大きなテーマですが
高齢化が着々と進んでしまっている現代日本では「高齢者の低栄養」についての話もよく耳にするかと思います。

そこには上図のような負のサイクルを代表例として、

・「栄養のことはわからないし特に気にしていない、好きなものだけ食べたい」
・「病気などで気力体力が落ちてしまい、食事で疲れてしまう」
・「味を感じにくくなった」
・「食べたくてもうまく噛めない、飲み込めない」

等々といった様々な原因が存在しています。
これらの全てを歯科が解決することは不可能です。
しかし、歯を含めたお口の環境と食事、栄養は切っても切れない関係ですので、歯科医師は一つの視点として、他の職種の方々と協力しながら一人一人の楽しい食事を支えていく取り組みを進めています。

実際に国の制度としては現在どのような動きがあるのでしょうか。
厚生労働省は、「来年4月(2024/4)の介護報酬改定に向けて、利用者のリハビリテーション、口腔ケア、栄養管理の推進を図る方策を検討していく」と発表しています。
在宅でも施設でも栄養管理を必要とする利用者はまだまだ多いことから、
リハビリ、口腔ケア、栄養管理を一体的に運用することが、自立支援・重度化防止の効果を更に高めることができる、と期待されています。
今後より一層、介護施設や居宅サービスといった環境下において歯科と栄養が関わる機会が増え、より適切な支援が可能になると予測されます。

先程も述べた通り、高齢者の低栄養に対して、歯科のみで解決できる範囲は限られてしまうため、多職種での連携はもちろん必須になりますが
もし、まず歯科で低栄養について注目するとなると

・身体的・社会的状況の把握
 (既往歴、現在治療中の疾患、体調や自立度、生活環境など)
・経時的な体重変化
 (最低1か月単位での変化を見ることで栄養状態の簡単なスクリーニングが可能)
・食事状況の把握
 (どんなものをどれくらいの量食べているか、誰が食事を用意しているか、
食事中にムセが起きていないかどうか)
・食形態について適切かどうかの判断
 (各々がそれぞれの機能に適した形態か、安全においしく食べられるか)
・その他、口腔内の環境で食事摂取に悪影響を及ぼす因子
 (う蝕や歯周病はないか、義歯は疼痛なく適切に使えているかどうか、乾燥していないか)

等といった情報が必要になってくるかと思います。
ここからまず大きな問題となっている因子を歯科的な視点で捉え、必要な情報を医師や管理栄養士などといった他の職種と共有し、解決策を模索するといった流れになります。

いかがでしたでしょうか。
省いてしまっている点はございますが、歯科が栄養に関わる仕事も担っており、徐々に活躍する場が増えていきそう、ということをなんとなく知っていただけたらと思い、書かせていただきました。

今回は低栄養についてのみ書かせていただきましたが、生活習慣病等の偏った食事や食べすぎにもお気をつけください。
何か質問等ございましたら、お気軽にご相談ください。

歯科医師 白井 健太郎

参考文献:歯科と栄養が出会うとき. 菊谷武・尾関麻衣子.2023-10-29
https://i.care-mane.com/news/entry/tanaka202300919
https://i.care-mane.com/news/entry/2023/09/20/132209
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/

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顎が痛い!顎関節症のお話

皆様こんにちは。
秋も一段と深まり、紅葉の美しい季節となりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
さて、気候も過ごしやすくなり食べ物も美味しい時期ですが、ご飯を食べたり口を開けた時音がする、痛いと感じることはないでしょうか。
今回はそのような症状が出る疾患の一つである、顎関節症についてお話しさせていただければと思います。

1)顎関節症の概念

顎関節症は、顎関節や咀嚼筋の疼痛、顎関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名です。
その病態は咀嚼筋痛障害、顎関節痛障害,顎関節円板障害および変形性顎関節症です。

2)顎関節症の病因

顎関節症の発症メカニズムは不明なことが多いといわれています。
日常生活を含めた環境因子・行動因子・宿主因子・時間的因子などの多因子が積み重なり、個体の耐性を超えた場合に発症するとされています。
ここでお話しするのが、個別対応の重要性です。
年齢、性別、社会背景などによって発症因子やリスク因子が全く異なります。
例えば、近所に、すごくおいしいパン屋さんができたので、朝、昼、晩とフランスパンを食べ続けたら、痛くて口が開かなくなった。
あるいは、

・あごにいいと聞いて
・ぼけの予防によいと聞いて
・体に良いと聞いて

起きている間はずっと一日中硬いガムをかんでいました。
などといったことはないえしょうか?
このような医療面接を通じて状況を把握することが、管理、治療を行う上でKey pointとなってきます。

3)顎関節の罹患状況

「平成28年歯科疾患実態調査」をもとに顎関節に何らかの症状がみられる患者数を推定すると約1900万人となります。
癌は高齢になるほど患者数が増えますが、顎関節症は高齢になると患者数が減ります。
すなわち疫学的には、顎関節症は予後の良い、加齢とともに自然治癒する疾患と言えます。
ただし予後が悪く慢性化する患者も一定数存在します。

4)病態分類と治療について

・顎関節症の病態分類(2013年)

【○咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)】

治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
物理療法(咀嚼筋マッサージ)
運動療法(開口ストレッチ)
温熱療法
口腔内装置(オクルーザルアプライアンス)
※TCH(歯列接触癖のことがあり、上下の歯を持続的に接触させることを言う)

【〇顎関節痛障害(Ⅱ型)】

治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
運動療法(顎関節可動域訓練:開口ストレッチ)
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDS)
適応外使用(「顎関節症の関節痛」に対して)
ロキソプロフェン(ロキソニン)
ジクロフェナック(ボルタレン)
ナプロキセン(ナイキサン)
変形性関節症なら
アセトアミノフェン(カロナール)など
※NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬の略で解熱鎮痛薬と同義語として用いられる)

【〇顎関節円板障害(皿型)】

・復位性
治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
運動療法(顎関節可動域訓練:開口ストレッチ)
顎関節徒手的授動術(マニピュレーション)保険適応
に加えて
痛みを伴う場合はNSAIDSを投与
すごくラウドな雑音(大きな音)は内視鏡による処置も検討します。
音が鳴るのが怖くて大きく口を開けないなどといった行為は逆効果となります。

・非復位性
治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
顎関節徒手的授動術(マニピュレーション)(顎関節円板の整位が可能な症例では試みる)
整位が不可能な症例では、顎関節可動域訓練(モビライゼーション)
痛くてもリハビリなので頑張って開けましょうと応援します。
難治の場合は内視鏡手術も視野に入れます。

【〇変形性顎関節症(Ⅳ型)】
臨床症状として、顎関節痛、開口障害あるいは間接雑音のいずれか1つ以上を呈するので、治療は他の病態に対する治療に準じます。

ここまで顎関節症についてお話しさせていただきました。先にも述べたように顎関節症はきちんと管理することで治癒していく可能性が高い疾患です。
そのため、過度に心配する必要はありませんが、あまり改善が見られない場合、悪化しているような場合には一度早めの受診をお勧めします。

歯科医師
永井 綾香

参考文献
顎関節症の指針2020(一般社団法人日本顎関節学会編)
がんの統計2022(公益財団法人がん研究振興財団)

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口腔アレルギー症候群

皆さまこんにちは。
時折感じるさわやかな風に、秋を感じるようになりました。

秋にはコスモスや金木犀など、季節の花も多く見られる時期ですが、実は秋にも花粉が飛んでおり、「秋の花粉症」を患っている方もいらっしゃるかと思います。
今回は、花粉症との関わりが注目されている「口腔アレルギー症候群」についてお話ししようと思います。

●口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)とは?

1987年 Amlotらにより提唱された概念であり、何らかの食材によって口腔内や咽頭にアレルギー反応が出る病気とされています。
果物や生野菜に含まれるアレルギー反応の原因となるたんぱく質(アレルゲン)が、口の中の粘膜に触れて起こり、体内のIgE抗体(アレルギー物質に対する抗体)が関係しています。
また、花粉症の人が果物や野菜を食べた場合に際に生じるものを、『花粉-食物アレルギー症候群(PFAS:pollen-food allergy syndrome)』と呼ぶようになりました。

●どんな症状が起きる?

果物や生野菜を食べた直後から数分以内に唇や舌、口の中の粘膜、咽頭にかゆみやピリピリとしたしびれ、むくみなどが誘発されます。
ごく稀に、アナフィラキシーショックと呼ばれるショック症状を起こすこともありますが、多くは食後しばらくすると自然に消えるものがほとんどです。

●花粉症と食べ物にはどのような関係がある?

花粉症は、口腔アレルギー症候群の発症と同じく、目や鼻に入ってきた花粉からアレルギー反応の原因となるタンパク質(アレルゲン)が出されることで、目の痒みや鼻水といった症状を引き起こします。
花粉と食べ物の一部の間で、このアレルゲンの構造が非常に似たものがあることから、花粉症の人で口腔アレルギー症候群が発症しやすくなっていると考えられます。

●どんな食べ物で症状が出やすい?

リンゴやモモなどのバラ科の果物や、メロンやスイカなどのウリ科の果物で起きやすいとされています。
また、以下の図のように、反応する花粉の種類によって、口腔アレルギー症候群の原因となる果物や野菜は変わってきます。

●子供に発症は多い?

年齢層の幅は広く、大人になってから突然症状が出ることもあります。
また発症にも個人差もあるため、特定の食べ物で違和感があれば専門医の受診をお勧めします。

●対処法は?

根治療法は無く、症状の出た食べ物を避けることしかできません。
しかし、原因となるたんぱく質(アレルゲン)は熱や消化で変形し、発症しにくくなるため、加熱や加工で食べるなどの工夫を行うことで対処することが可能です。
症状が出た場合には、抗ヒスタミン薬が有効とされています。

いかがでしたでしょうか?
今回、「口腔アレルギー症候群」についてお話ししましたが、お口の粘膜の異常は、口腔アレルギー症候群以外にも病気が考えられます。
何かおかしいな?と思いましたら、お気軽に歯科医院にご相談ください。

歯科医師 奥村 知里

参考文献:「口腔アレルギー」治療法は.朝日新聞.2022-05-04.p.16.
https://www.tanijiri.com/specialty/oas
https://www.kyowakirin.co.jp/kahun/about/oas.html
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=14

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漂白(ホワイトニング)ってよく聞くけれど、何なの?

残暑がまだまだ厳しい日々が続いておりますが、秋の兆しも感じられるようになりました。
夜風が涼しく、朝晩の過ごしやすい気温が心地よい季節ですね。
この季節は、秋の味覚を楽しむと同時に、残暑の疲れを癒し、心身ともにリフレッシュすることが大切です。
美味しい秋の食材でエネルギーを充電して健康な日々をお過ごしください。

皆さんは、鏡で自分の歯を見て「前より黄色くなったなあ」「もっと歯が白くならないかなあ」と思ったことはありませんか?
今回は、歯の漂白についてお話ししようと思います。

漂白には、神経のない歯に行う➊「ウォーキングブリーチ」と、神経のある歯に行う➋「バイタルブリーチ」があります。
さらに、バイタルブリーチは歯科医院で実施する①「オフィスブリーチ」とご自宅で実施する②「ホームブリーチ」があります。
それぞれについてみていきましょう。

➊「ウォーキングブリーチ」

漂白剤を図のように歯の中に入れ、歯の内部から白くする方法です。処置後約1週間で再来院していただきます。
その間、継続して(歩いている間も)漂白されるため「ウォーキング=歩く」ブリーチと呼ばれています。
十分な白さになるまで、漂白剤の交換を繰り返します。3-4回される方が多いです。

適応症(できる方)
・根の先に膿が溜まって、根管治療した歯
・外傷(転倒や事故で歯をぶつけた)で歯髄が死に、変色した歯
・ある程度ご自身の歯が残っている歯

禁忌症(できない方)
・金属による変色
・無カタラーゼ症の方

➋「バイタルブリーチ」

バイタルブリーチには、①「オフィスブリーチ」②「ホームブリーチ」の2種類があります。

①「オフィスブリーチ」は歯科医院で行うもので、1回の治療時間は長いものの、その日のうちに白くすることができます。
漂白操作は歯科医師と歯科衛生士が行うので、口を軽く開けているだけで大丈夫です。

一方、②「ホームブリーチ」はマウスピースをご自宅にて装着する方法です。
毎日一定時間、マウスピースに薬剤を入れて装着していただきます。
利点として、漂白効果の持続時間が長い、自然な白さになりやすいという報告があります。

「オフィスブリーチ」「ホームブリーチ」には、下の表に示すような違いがあり、一概にどちらが優れているとはいえません。
そのため、オフィスブリーチとホームブリーチをどちらも実施する「デュアルホワイトニング」という方法もあります。

オフィスブリーチ
ホームブリーチ
実施者 歯科医師、歯科衛生士 患者様
場所 歯科医院 自宅
治療時間 約90分 1日約2時間×約14日
漂白操作 簡単 煩雑
使用する漂白剤の濃度 高い 低い
効果持続期間 やや短い やや長い
効果が出るまで 即日 1-2週間

適応症(できる方)
・加齢による変色
・軽度のテトラサイクリン歯
・軽度のフッ素症

禁忌症(できない方)
・表面に亀裂のある歯
・欠損が大きい歯
・無カタラーゼ症の方

漂白後の注意

・知覚過敏症
オフィスブリーチでは術直後、ホームブリーチでは開始数日後に歯がしみる症状が出ることがあります。
症状が出た場合、知覚過敏を抑制する薬剤を塗布したり、知覚過敏用の歯磨剤を使用していただいたりすることで収まる場合がほとんどです。

・歯肉の白色化
歯肉が漂白剤に触れることで、白くなることがあります。
数時間から1日程度で元の色に戻りますのでご安心ください。

・飲食物の制限
オフィスブリーチでは漂白後24時間、ホームブリーチでは漂白期間中歯に色が付きやすい状態となるため、色の濃いもの、ポリフェノールが含まれるものなどを避けて下さい。
また、しみやすいため酸性が強いものも避けて下さい。

・色の後戻り
白くなった歯が再度着色してしまうことで、半年から1年で起こることが多いです。
普段の飲食物や生活習慣で個人差があります。

そもそも、何故漂白で歯が白くなるの?

使用する薬剤に秘密があります。
皆さんは「過酸化水素」をご存じでしょうか。
濃度3%前後の過酸化水素水をオキシドールともいいますが、身近なところでは洗濯用漂白剤に含まれています。
この過酸化水素水は光や熱、アルカリ環境、触媒等で分解される過程で、ヒドロキシ(OH)ラジカルというものを生じます。

過酸化水素を歯に応用すると、このヒドロキシラジカルが有機化合物=汚れや着色を分解するため歯が白くなります。
そのため、漂白で歯が削れることはありません。

いかがでしたでしょうか。
ホワイトニングの細かな治療の手順や費用に関して興味のある方は、歯科医師、歯科衛生士までお気軽にお問い合わせください。

歯科医師 田代 憲太朗

(参考文献)
保存修復学21 第6版 永末書店
保存修復学 第7版 医歯薬出版株式会社
これで納得!デンタルホワイトニング 医歯薬出版株式会社

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上顎洞挙上手術とは
~サイナスリフトの有効性~

皆さま、こんにちは。
猛暑の厳しい日々が続く8月になりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
連日40℃に迫る暑さで疲れがたまり、熱中症や熱ストレスのリスクが高まっています。
適切な栄養の摂取と、こまめな水分補給、適度な休息を心掛け、お身体の体調管理に留意しながらお過ごしください。

歯を失うことでタンパク質の摂取量が減少することが報告されています(※1)。
虫歯や歯周病で歯を失った場合に、インプラント治療が有効であることは、近年では広く知られるようになってきています。
しかし、実際には歯を失った後の不十分な骨量が足りず、インプラント治療をあきらめざる得ない場合も少なくありません。
今回は、上あごの骨が薄い患者様のインプラント治療を可能にとする「サイナスリフト術」という治療技術についてお話しいたします。

インプラント治療は、チタンやジルコニアでできているネジ状の棒(「インプラント体」といいます)を顎の骨に埋め、この上部に人工の歯冠(「上部構造」)を取り付け失った歯を回復させる治療方法です。
他の歯を傷つけることなく、自然な形の歯を再現できる等のメリットがあります。

しかし、誰もが選択できる方法ではありません、骨の中にインプラントを埋入するためには、骨の十分な厚みや幅が必要になってきます。

歯を失った部分の骨は痩せて薄く細くなるため、インプラントを支える十分な骨の量を確保できなくなる場合があります。
特に上顎臼歯部(上あごの奥歯)では、骨の上には「上顎洞」と呼ばれる空洞(副鼻腔)があり、骨の厚みが薄くなる傾向が強く、通常のインプラント治療ができないケースが多くあります。
こうした場合に有効なのが、上顎洞底の骨の厚みを増加させる「サイナスリフト術」です。

サイナスリフトの目的

サイナスリフト術の目的は、インプラント体を埋入するため骨の厚みを確保することです。
上顎洞は空洞の外側を一層上顎洞粘膜(シュナイダー膜)で囲まれています。
サイナスリフトでその上顎洞粘膜を持ち上げて作ったスペースに人工骨を填入し骨の高さを増やし、インプラント体をしっかりと埋入できる骨の足場を築きます。

サイナスリフトの術式

この人工骨を填入する方法には、
➊ラテラルアプローチ
➋クレスタルアプローチ
と呼ばれる主に2つの方法があります。

この方法では手術による侵襲が大きくなってしまいますが、より多くの骨を作ることができます。
ラテラルアプローチは、以下のような場合に適しています。

・上顎洞の正面または後方からのアプローチが困難な場合。
・上顎洞の底部の骨量不足が比較的少ない場合に、骨を追加するための十分な領域がある場合。
・上顎洞の位置や解剖学的条件により、他のアプローチ方法が制約される場合。

この方法では、手術による侵襲がラテラルアプローチに比べ小さくすみますが、骨を多くつくることはできません。
クレスタルアプローチは以下のような場合に適しています。

・上顎洞の正面や後方からのアプローチが困難な場合。
・上顎洞の底部の骨量不足が比較的少ない場合に、骨を追加するための領域が制約されている場合。
・サイナスリフト手術の際に、骨増量を行いながらインプラントの挿入を同時に行いたい場合。

サイナスリフト術は上顎洞底粘膜を挙上するため、術後一過性に上顎洞炎の症状を起こすことがよくあります。
また、鼻閉や鼻出血の症状が出やすいので鼻をかむ等の上顎洞に圧力のかかる行為を行うと上顎洞底粘膜が破れる可能性があるので注意が必要です。

サイナスリフト術の効果

【1.骨の増加】
サイナスリフト手術により、上顎洞の底部に骨を追加することで、インプラント挿入に必要な骨の量を確保することができます。
骨量不足の場合、インプラントが適切に固定されず、成功率が低下する可能性があります。
サイナスリフトによって骨量を増加させることで、インプラントの長期的な成功率を向上させることができます。

【2.インプラントの安定性】
骨とインプラントがしっかりと結合(オッセオインテグレーション)することにより、咬合力や咀嚼力を支えることができます。
サイナスリフトによって骨量が増加することで、術後のインプラントの安定性を向上させることが可能となります。

【3.美容的な改善】
上顎の骨量が不足している場合には、歯茎の形が不均一になることがあります。
サイナスリフトによって骨量を増加させることで、歯茎の形態を回復することが可能となり、インプラントや補綴物の装着により、自然な歯の形状を取り戻すことができます。

【4.インプラントの適用範囲の拡大】
サイナスリフト手術によって骨量が増加することで、インプラントの適用範囲が拡大します。
骨不足が原因でインプラントが不可能とされていた患者さまに対して、サイナスリフトを行うことでインプラント治療の選択肢が広がります。

静脈鎮静法(セデーション)を併用すれば、リラックスして手術を受けることができます。

鎮静状態で手術を受けるため、不快感や痛みを最小限に抑えながら手術を受けることができます。
サイナスリフト手術は、口の奥の上顎洞(副鼻腔)の領域にアクセスする必要があり、時には一定の痛みや不快な感覚・拘束感を伴う事があります。
この様な不快感を予防し、手術時の不安を取り除く為に当院では、静脈鎮静法(セデーション)という点滴による麻酔を併用した手術を行っています。

麻酔専門医の管理下で鎮静剤・鎮痛剤を点滴投与することで、術中・術後に手術中の記憶が残ることはありませんので、安心して施術を受けていただけます。

手術後の注意点

・手術後は一時的に出血や腫れが起こることがあります。
・処方された鎮痛剤や抗生物質を指示通りに服用してください。
・手術部位に直接触れないように注意して歯磨きを行い、処方された口腔洗浄液でうがいをすることが推奨されます。
・傷口を刺激しないような注意をお願いいたします。
・手術後数日は、お食事は刺激の少ないものや柔らかいものをお摂りいただき、アルコールは控えてください。

サイナスリフト術は、今まで不可能だった部位へのインプラント埋入を可能とできるとても有用な治療方法です。
骨がないからインプラントをあきらめていた方、この治療に興味を持たれた方はご相談いただければと思います。

歯科医師 清原 秀一

参考文献
(※1)Iwasaki M, Yoshihara A, Ogawa H, et al.: Longitudinal association of dentition status with dietary intake in Japanese adults aged 75 to 80 years. J Oral Rehabil 43:737-744,2016.

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