千葉市でおすすめ評判の歯医者・ブライト歯科・矯正歯科クリニックの口コミ・評判

Author Archives: 梶永佳奈代

子供の口が開いていると何が悪いの?

今年も、ジメジメとすっきりしないお天気が多くなって来たように感じます。
梅雨の走りでしょうか?
梅雨と聞いただけで憂鬱な気分になりますね。
梅雨が終わった夏の事を考えて、今月も皆様どうか健康に気をつけて過ごされて下さい。

突然ですが、今日は私が気になるトピックについて少しお話しさせて頂きたいと思います。
お子さんの口がポカンと開いている事が多くはないでしょうか?

子供の口が開いていると何が悪いの?
と思われる方とても多いと思います。
お口が開いているということは、鼻呼吸ではなく口呼吸をしているという事が考えられます。

口呼吸を続けていると

・虫歯になりやすい。
・歯周病、歯肉炎になりやすい。

・出っ歯になりやすい。
・舌の位置が下がりやすい。
・いびきをかきやすく、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる。
・姿勢が悪くなる。
・口腔習癖がついてしまう。

実はこの様に沢山の弊害をもたらす事が分かっています。

なんで口呼吸になってしまうの?

・鼻炎やアレルギー、アデノイドなど耳鼻科疾患
・歯並びや口周りの筋肉が弱い歯科的な問題がある。
・硬いものを食べる機会が減る、言葉の伝達の仕方の変化で口を使う機会が減ったことで筋 肉が発達しにくくなっている。

他にも、スマートフォンでゲームに熱中している時なども口呼吸になりやすいので注意が必要です。
また口呼吸は自覚しにくく、わかりにくい事も多いです。
その場合は以下の事を確認してみ てください。

・唇が乾いている事が多い。
・口が閉じにくく、閉じると顎に梅干しのような皺が出来る。
・上顎の歯茎が腫れぼったい。

この様な事から口呼吸が指摘される事もあります。

どこを受診したらいいの?

まずはお子さんに、お口を閉じるように声がけをしてあげてください。
意識を変える事がとても大切です。
そして耳鼻咽喉科疾患がないか耳鼻咽喉科で確認してください。
そこで風邪やアレルギーが ないのに口呼吸が治らない場合は歯や噛み合わせに原因があります。
まずは、かかりつけの 歯医者さんやお近くの歯医者さんを受診してみてください。
その後必要に応じて、小児歯科 や矯正歯科を受診されると良いと思います。

耳鼻咽喉科疾患の扁桃肥大(アデノイド)

口呼吸を治すにはどうしたらいいの?

耳鼻科疾患に対しては、耳鼻咽喉科を受診してください。
歯並びが悪い事が原因の場合は矯 正治療を行います。
口周りの筋肉に問題がある場合はMFT(筋機能療法 oral myofunctional therapy)を行います。

MFTとは?

筋肉の不調和を舌や口唇、頬などの口腔顔面筋のトレーニングをとおして整えていく療法です。
咀嚼時、嚥下時、発音時、安静時の舌や唇の位置の改善、および呼吸をはじめとした口 腔機能の改善効果が期待できます。
矯正治療と並行して行うとより効果的とされています。

具体的にはどうやってやるの?

お口周りの筋肉を鍛えるのは、体に筋肉をつける事と同じように継続して続ける事が大切です。
今回は取り入れやすいと思う、トレーニングをご紹介させていただきます。

ステックを用いて舌を尖らせ、舌尖のの強化を行います。
舌尖部で、口角と上下口唇をなぞり運動性を向上させます。

咀嚼筋の収縮を手で触れ確認しながら噛み締めます。
(A側頭筋B咬筋)

いかがだったでしょうか?口呼吸の奥深さを知っていただけたら幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございます。

歯科医師 西田光里

参考文献
矯正歯科学 第六版 医歯薬出版

http://www.oralmyofunctional.info/

新版口腔筋機能療法MFTの実際 クインテッセンス出版株式会社
小児歯科学 第五版

 カテゴリ:未分類

歯周病原細菌と血管病変の関わり

皆様こんにちは。
すっかり春らしい暖かな季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
朝晩はまだまだ冷え込む日もありますので体調を崩さないように気をつけてお過ごしください。

今回は歯周病と血管病変の関係についてお話ししたいと思います。
皆様ご存じかと思いますが、歯周病とは歯と歯茎の境目に付着したプラーク(細菌の塊)・歯石(プラークが石灰化したもの)に存在する歯周病原細菌により歯肉の発赤、腫れ、出血などが起きる病気です。
進行すると歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)が深くなり、細菌によって歯を支えている骨などの歯周組織を破壊し、結果的に歯を失う原因になります。

抜歯の主原因(全体)と抜歯の主原因別にみた抜歯数(年齢階級別、実数)

2018年に全国2,345の歯科医院で行われた全国抜歯原因調査結果より
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-04-002.html

上図より、歯を失う原因は歯周病が最も多いことがわかります。
そして、近年の研究によってこの歯周病を起こす歯周病原細菌は全身の血管疾患と関与していることが分かってきました。


動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールなどが付着して血管が狭く硬くなり、血液の流れが悪くなった状態です。糖尿病高血圧高脂血症肥満喫煙などが原因で発症します。
一般的に動脈硬化と言えばアテローム性動脈硬化症を指します。

その他、血管病変のやや危険なものとして四肢の粥状硬化症、下肢静脈瘤、バージャー病、などと関係があります。
バージャー病については後述させていただきます。
一見、口の中の疾患である歯周病と全身を巡る血管の病変は無関係だと思う方は医療関係者も含め、沢山いらっしゃると思います。
しかし様々な研究により生死に関わる重篤な病変にも関係があることが分かってきました。
次に、そのメカニズムについてご説明していきます。

〇歯周病による循環器疾患に影響するメカニズム
歯周病にかかっている人はそうでない人に比べ1.5~2.8倍も循環器病を発症しやすいことがわかっています。
循環器病の原因となるアテローム性動脈硬化症(コレステロールなどの脂質が動脈内膜にお粥状に沈着した動脈硬化)=粥状動脈硬化の程度が、歯周病と関連することがわかってきました。
興味深いことに、アテローム性動脈硬化が起きている部分から歯周病菌が検出されたという結果が多数、報告されています。
歯周病が循環器病に影響するメカニズムは、歯周病菌やその菌体成分などが、直接、血管に障害を与える作用に加え、炎症の起きた歯周組織で作られる「炎症性サイトカイン」(IL- 1、IL- 6、TNF-αなど)が血流を通じて心臓や血管に移動し、血管内皮細胞やアテローム性動脈硬化部分の免疫細胞が活性化されて、心臓血管系の異常を引き起こすのではないかと考えられています。
また、肝臓が炎症性サイトカインの刺激を受けて作る「急性期たんぱく質(CRP)」の作用がアテローム性動脈硬化症の進行を促すのではないかと考えられています。
国立循環器病研究センターHPより(www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/general/pamph105.html
さて、先程冒頭でご紹介致しましたバージャー病という病気を皆さまご存じでしょうか。
なかなか耳にされたことがない疾患だと思いますが、こちらも歯周病菌が関与する重要な疾患ですのでこの機会に是非ご理解いただけたらなと思います。

○バージャー病とは
たばこを吸う20才代から40才代の男性(女性は少ない)にみられる代表的な手足の動脈の病気です.
しかもだんだんと血管がつまってくるために,ほっておけば足が腐ってしまう病気です.
別名として特発性脱疽,閉塞性血栓血管炎などと言われることがあります.

病気は,足趾(あしゆび)や指にチアノーゼ(皮膚が濃い青紫色になること)や強い痛みがおこり,時間ともに皮膚が剥げたような潰瘍,腐った壊死と呼ばれる状態になります.
ついには足だけの切断,ひどくなると膝関節の15cm位下での切断になることがあります.
静脈にも炎症を起こすこと,たばこをやめると病気が進行しないことなど特徴があります.
しかし依然原因の定まらない難病とされており、国の特定疾患に指定されています.

アメリカ人のバージャー博士が1900年初頭研究論文を多数発表したことから彼の名があります.
我が国では,1990年頃より発症患者さんが減少しています.
欧米ではすでに我が国より早くから減少していますが,南および東アジアには依然多く,対策が急がれている血管の病気です.

《診断基準(塩野谷)》
50才以下の発症、ヘビースモーカー、下肢の動脈閉塞、遊走性静脈炎と、さらに粥状硬化症悪化因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病が無いことである。
(※この基準に1つでも合わない症候群がどうなるのかは一切書かれていない。)

〇バージャー病の研究
この難病の原因の解明と予防法や治療法の開発のために,東京医科歯科大学ではバージャー病共同研究グループを組織して,歯周病学分野石川烈教授と岩井武尚教授を中心に研究を進められてきました.
(以下http://www.tmd.ac.jp/med/srg1/sinryo_buerger02.html参照)
『バージャー病患者の口腔内と患部の血管を調べて,歯周病とバージャー病との関連について検討しました.
その結果,全てのバージャー病患者は歯周病と診断され,その程度はいずれも中等度から重症でした.
また,患部の血管試料のほとんどから歯周病菌が検出されました.
それに対して,正常血管の試料からは歯周病菌は全く検出されませんでした.
この発見は,今まで原因不明であったバージャー病と歯周病の関連を示した世界で初めての成果で,米国の血管外科専門誌 Journal of Vascular Surgery 41巻2005年7月号に 「Oral bacteria in the occluded arteries of patients with Buerger disease」 (バージャー病患者の閉塞動脈内に口腔細菌) と題して発表されます。
この発見によりバージャー病の原因や悪化が口腔内の細菌特に歯周病菌によるという可能性が強く示され,バージャー病の予防法や治療法の開発のための大きな手掛かりが得られました。』
また、バージャー病にかかるということは,たばこによる歯周病の悪化に引き続く歯周病菌の血管感染によるものではないかと考えられています。
そもそも喫煙は動脈硬化の原因となることが分かっており、またたばこの主成分であるニコチンはバージャー病の原因であると考えられ、研究が続けられてきました。
結果として、喫煙がバージャー病を発症させ、痛みを緩和させようと、さらにニコチン依存となり自分の持つ遺伝子型と一致することで病気が進行することがわかりました。
また喫煙は歯周組織に対して下図のような影響を及ぼす為、


現段階の研究結果によるバージャー病の発症にはこれらの因子が複雑に絡み合っているものだと言えます。

〇治療法
現在におけるバージャー病の治療法としては、受動喫煙も含め、第1に禁煙を厳守することだそうです。
このために適切な禁煙指導を行う必要があります。
また患肢の保温、保護に努めて靴ずれなどの外傷を避け、歩行訓練や運動療法を基本的な治療を行い、薬物療法としては抗血小板薬や抗凝固薬、プロスタグランジンE1製剤の静注などが行われます。
重症例に対しては末梢血管床が良好であれば、バイパス術などの血行再建を行うそうです。
血行再建が適応外とされる症例では、交感神経節切除術やブロックが行われており、また肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor 、HGF)を用いた治療について検討が進んでいます。

今回は歯周病と血管病変との関わりについてのご説明をしてきましたが、
歯周病と関係の深い重要な全身疾患はその他にもございますので最後にその一部を
ご紹介させていただきます。

https://www.jacp.net/perio/effect/ 日本臨床歯周病学会HPより

いかがだったでしょうか。
歯周病は、さまざまな全身の病気と関係していることがわかってきました。
互いに影響を及ぼす結果、歯周病も全身の病気も悪化する可能性があります。
生活習慣病や循環器病を持つ患者さんは、歯周病は口の中だけの病気と軽視せず、かかりつけの歯科医師のもとで定期的な歯科検診を心がけましょう。
治療の必要性がある場合は、しっかりと歯科治療、歯周治療を受け、口の中を健康に保ちましょう。
歯周病の原因は、歯と歯ぐきの境目にすみついた細菌です。
そのため日々正しい歯みがきを続けることが一番の予防方法なのです。
自分に合った歯のみがき方を身につけて、自分で歯ぐきの健康を守れるようにしましょう。
また、たばこは歯周病の発症や進行に悪影響を与えることが明らかになっています。
全身的な病気の予防や治療に加えて、禁煙など生活習慣の改善も歯周病予防に必要です。
なによりも健康な歯ぐきを保つこと、つまり、健康な歯でおいしく食べることは、有意義で快活な日常生活を過ごしていくための大前提なのです。

歯科医師 小松リナ

 カテゴリ:未分類

歯科衛生士が提案するアンチエイジング

アンチエイジング=健康⻑寿医学
『抗加齢医学(Anti-Aging Medicine)=アンチエイジング』という⾔葉は近年テレビや雑誌で多く取り上げられており なじみ深いものとなって来ております。
しかし 『アンチエイジング=美容医学』・年齢に逆らった⾒た⽬に執着し 無理やり若返ろうとするという意味・イメージが先⾏していますが、『抗加齢医学の定義』は
〝元気で⻑寿を享受することを⽬指す理論的・実践的科学“という考えを意味しています。

⼈は外的ストレス(喫煙・不規則な⽣活⾏動・公害ガス・紫外線など)や内的ストレスによる⾝体を錆びつかせる活性酸素・フリーラジカルが、体内に多く発⽣します。
その結果 ⽣活習慣病が発⽣し⽼化あるいは加齢が加速的に促進されます。

健康な⾝体で過ごすために、「アンチエイジングの三原則」があります。

1 不必要な物は排泄→プラーク・⻭⽯除去
プラークや⻭⽯の⻑期付着・沈着は炎症を誘発します。
慢性的な炎症が⻭周疾患発症や重度進⾏ 全⾝疾患(糖尿病・認知症や癌・脳卒中・⼼疾患)と深く関わってきます。

2 不⾜分は補う→トリートメント
過剰なブラッシング等によりは表⾯には⾒えない細かな傷が作られます。
また 頻回な酸性の飲⾷や摂取の仕⽅により⻭の内部からカルシウム成分が溶出し不⾜してしまいます。
⻭科医院で⾏うトリートメント(⻭⾯研磨)でナノ粒⼦ハイドロキシアパタイトペーストを擦り込む作業は不⾜分を補うアンチエイジング⾏動となります。

3 ⼝腔の防御⼒→「唾液⼒」
唾液の中には多くの化学物質が含まれておりすぐれた作⽤があります。

電解質 ナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄・銅・亜鉛など
糖質 ブドウ糖とその中間代謝物・乳酸など
タンパク質 アミラーゼ・リゾチーム・糖タンパク・免疫グロブリン・酵素など
⾮タンパク性
窒素化合物
尿酸・クレアチニン・など
その他 コルチゾール・グルカゴンなどのホルモン・ビタミンなど
組織修復作⽤ 成⻑因⼦が傷を治す
潤滑作⽤ 機械的刺激から⼝腔粘膜を保護、安静時唾液の性質が⼤きく関与
浄化作⽤ ⾷物中の炭⽔化物やプラークが産⽣する酸などを洗浄
緩衝作⽤ ⼝腔内の pH を中性に維持、解禁の繁殖を抑える
抗菌作⽤ 外来の病原微⽣物の侵⼊を防御
再⽯灰化作⽤ 無機質を供給
消化作⽤ デンプン分解、脂肪分解作⽤
味覚作⽤ 味覚物質を溶解し味覚の促進

噛む事で副交感神経が刺激されて作られる若返りホルモンに「パラチン」軟膜を保護する事で病原体の侵⼊を防ぐ「ムチン」(糖タンパク)「ペルオキシターゼ」は⼝腔細菌の増殖や酸産⽣を抑えます。
IgA.IgG(免疫グロブリン)は細菌のコロニー形成を阻害し⼝腔内組織への付着を防⽌します。
各々が役割を担当し⼝腔内感染から守ってくれています。
唾液の⼒で⼝腔をカリエスや⻭周病から守る。素晴らしい予防効果・アンチエイジングが得られます。

【⻭科衛⽣⼠が提案できるアンチエイジング 】

1 予防
⻭周病は⽣活習慣病という観点から⻭周病は病的⽼化と考えられます。
予防を⾏い健康な⻭と、⻭周組織で噛める 話せる 飲み込める。
効果あるの機能年齢を若く保つことができます。

2 美的 PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)
治療場⾯では炎症改善なため。予防の場⾯では⻭周組織確⽴と維持のため。
より健康で美しい⼝元を、作り上げていきます。

3 顔の筋⾁のトレーニング
⼝元には 30 種類もの表情筋が存在します。
きちんと筋⾁を動かして咬合し⿐呼吸をする事により、唾液分泌促進・美しいフェイスラインが得られます。
⽇々無意識に過ごしているときはわずか20%程度の筋⾁しか使えていません。
⽚⽅噛み・⻭ぎしりなどで過剰な⼒がかかり⾎液・リンパ液の循環がわるくなり⽼廃物や⽔分がたまり眼や頬にむくみが出てしまいます。

4 ⼝腔内・外マッサージ
マッサージすることにより⾎流を促し炎症コントロールのほか 疼痛緩和や組織の活動をよくする効果があります。
⾝体がリラックス状態になると漿液性のサラサラ唾液が⽿下腺、顎下腺から分泌されます。
良質な唾液には酸素が多く含まれており、中性で無臭です。

5 ⼝臭
各種細菌等によって分解されてできる窒素有臭気、⾷物残渣、細菌などの浮遊物質など不安定な⼝腔環境 ⼝臭を引き起こす原因はたくさんあります。
予防には⾍⻭・⻭周疾患処置はもちろん、たくさんの唾液分泌を促し、唾液⼒を活⽤して⼝腔内環境を安定することが⼤切です。
⼝臭コントロールには⼝腔ケア以外に⾷の摂り⽅にも関係します。
よく噛む・空腹時 緊張時など⾃律神経の作⽤により唾液分泌が少ない時は ph 値の低い飲⾷物を避ける・⾷物繊維の多い物を摂る・⽔分補給などがあります。

健全に過ごせるためにアンチエイジングという視点でも⻭科医院が⾏動実践医学の窓⼝になっていければと思っております。

⻭科衛⽣⼠ 増⽥

 カテゴリ:未分類

謹賀新年2021

新年あけましておめでとうございます。

幸多き新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
皆様のご健康とご多幸を心からお祈りいたします。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、新型コロナウイルス感染症の感染者数が再び増加し、先の見えない不安を感じながら生活されている方も多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症は感染しても約8割の方は軽症で経過し、治癒する例も多いことが報告されています。
しかし、高齢者や基礎疾患のある方(糖尿病、心不全、呼吸器疾患など)、透析を受けている方、免疫抑制薬や抗がん薬などを用いている方では、重症化のリスクが高いことが報告されています。

特に呼吸器疾患については、新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいだけでなく、持病そのものを悪化させる可能性も懸念されます。
今回はその呼吸器疾患の一つであり、近年注目を集めている「誤嚥性肺炎」についてお話したいと思います。

●誤嚥性肺炎とは
誤嚥性肺炎は誤嚥によって引き起こされる肺炎であり、高齢者の肺炎の多くに誤嚥性肺炎の可能性があるとされています。
そして高齢者の肺炎は高齢になるに従い、受療率や罹患率、死亡率は増加しています。

●誤嚥とは
誤嚥とは食べ物や唾液が気管の中に入ってしまうことを言います。
本来、食べ物や唾液が気管に入らないように、飲み込む際には喉頭蓋や披裂部により気道を閉鎖します。
しかし、この閉鎖が甘かったり、飲み込む力が弱くて咽頭部に食べ物や唾液が残留してしまったりすることで誤嚥をしてしまいます。

【嚥下時の喉の様子】
左:食事前 右:嚥下中
赤の斜線部分の喉頭蓋が気道を閉鎖して、食べ物が気管に入らないようにしてくれている

この他にも、誤嚥は意識レベルの低下によって飲み込むタイミングがずれてしまったり、不意に食べ物が食道から逆流してしまったり(逆流性食道炎)しても生じ、上記のような飲み込む機能の低下を嚥下障害と言います。

【逆流性食道炎による誤嚥】
寝ている間など、不意に食べ物が食道から逆流することで、気管の方に胃の内容物が入ってしまう

嚥下障害の原因としては、加齢は勿論、認知症や脳血管障害、パーキンソン病、多系統萎縮症、筋委縮性側索硬化症(ALS)など様々な疾患が挙げられ、薬剤でも嚥下障害に影響を及ぼすものがあるとされています。
また、食べ物や唾液が気管の中に入ろうとすると、身体は咳をすることで気管の中への侵入を防ごうとします。
この反射を専門用語で『咳嗽(がいそう)反射』と言い、この反射が低下すると、食べ物や唾液による刺激に対しても咳が発生せず、知らず知らずのうちに誤嚥するといった不顕性誤嚥を起こしやすくなってしまいます。

【不顕性誤嚥の嚥下造影検査像】
気管内に誤嚥を認める(矢印)が、咳嗽反射は無く、誤嚥したものは吐き出されなかった

咳嗽反射の低下の原因としては、加齢や脳血管障害、レビー小体型認知症やパーキンソン病、パーキンソン関連疾患などのドパミンの産生が低下する疾患が挙げられ、こちらも薬剤で咳嗽反射に影響を及ぼすものがあるとされています。

●誤嚥をしたら必ず誤嚥性肺炎になってしまうのか

全ての誤嚥が誤嚥性肺炎につながるわけではありません。
誤嚥性肺炎が生じるかどうかは、『抵抗と侵襲のバランス』で決まり、「抵抗が小さい」もしくは「侵襲が大きい」ときに誤嚥が肺炎へと繋がります。
この場合の「抵抗」とは、吐き出す機能や免疫機能を指し、「侵襲」とは、誤嚥する物の量や性質(気道への為害性)が関係します。
誤嚥をしても、咳をして吐き出すことが可能で、免疫機能が良好であれば肺炎を生じることもありません。

また、誤嚥されたものが清潔で為害性が無ければ、侵襲としては大きくないため肺炎は生じません。

●誤嚥性肺炎の予防

①「抵抗」を向上させる
免疫機能や吐き出す機能を向上させることで、抵抗の向上をします。
免疫機能の向上には、栄養状態の改善や規則正しい生活を送ることなどが挙げられます。
薬剤の面で言うと、肺炎球菌ワクチンの利用も方法としてあり、これは誤嚥の二次感染として肺炎球菌に感染する可能性があり、不潔な口腔内には肺炎球菌が日和見菌として存在していることから考えられています。
吐き出す機能の改善のためには、咳嗽反射を促す薬剤(ACE阻害薬やシロスタゾールなど)や食品を利用する方法があります。
薬剤の利用は嚥下訓練とは異なり、服用さえできれば効果が期待できるため、認知症をはじめとする意思疎通が困難な場合に有効であると考えられています。

②「侵襲」を減らす
誤嚥する物の量と質を改善することで、侵襲を減らします。
誤嚥の量を減らす方法には嚥下訓練があり、喉の周りを鍛える運動など、様々な訓練があります。

A:顎持ち上げ体操

下を向いて力いっぱい顎を引き、同時に顎の下に両手の親指を当てて、顎は下に、指は上へと押し合う状態を5秒間キープ

B:おでこ体操

おへそをのぞき込むように顎を引き、おでこに手根部を当てて、手とおでこで5秒間押し合う

嚥物の質を改善する方法には口腔ケアがあります。
唾液中には口腔内の細菌が大量に含まれており、口腔ケアにより唾液中の細菌数を減らすことが可能になります。
他にも、不意に食べ物が食道から逆流することで生じてしまう誤嚥に対しては、消化管運動促進薬や制酸薬の服用で侵襲を減らすといった方法があります。

ここまで誤嚥性肺炎や誤嚥のことについてお話しをさせていただきました。
誤嚥性肺炎は高齢者では特に身近にある病気で、日頃の口腔ケア(歯磨き)で防ぐことができるものです。
口腔ケアは虫歯や歯周病を予防するだけでなく全身の健康を維持するために有効なものですので、面倒になりがちかもしれませんが今一度意識して口腔ケアを行ってみましょう。

末尾となりますが、新型コロナウイルス流行の終息を心より祈っております。

歯科医師
奥村知里

参考文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の“いま”についての10の知識
https://www.mhlw.go.jp/content/000699304.pdf
基本のきほん 摂食嚥下の機能解剖
薬からの摂食嚥下臨床 実践メソッド

 カテゴリ:未分類

歯周病と認知症

皆様こんにちは。
日増しに寒さが身にしみるようになって来た今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
イルミネーションの点灯も始まりましたが、今年は新型コロナウイルス影響で見に行くことも憚られる状況になっています。
お家でのクリスマスや、年末年始の楽しみ方を模索するのも新しい日常なのかもしれません。

さて、つい先日歯科界を賑わせた歯周病と認知症についての新しい発見がありましたので、今回ご紹介させて頂きます。

『歯周病と認知症』

この新しい発見というのは、「歯周病とアルツハイマー型認知症との病理的関連性」についてです。
数年前から既に歯周病とアルツハイマー型認知症には関連性があると言われてきていたのですが、今回、九州大学と中国北京理工大学との共同研究により、更に深い因果関係が解明されたのです。
認知症や歯周病はよく聞くと思いますが、どのような病理により生じる病気なのかについて簡単に説明させて頂きます。

『認知症とは・・・』

アルツハイマー型認知症では、脳が少しずつ萎縮していき認知機能が低下していきます。
認知症の約7割がこのアルツハイマー型であると言われています。
アルツハイマー型認知症で見られる症状には、中核症状と周辺症状の2種類があります。

①中核症状(認知症になると必ず起こる症状)
・記憶障害・判断力低下・見当識障害・実行機能障害

②周辺症状(認知症になっても必ず起こるとは限らない症状)
・不安・抑うつ・妄想・せん妄・睡眠障害・幻覚・徘徊・暴力・失禁

アルツハイマー型認知症では、年単位の時間をかけて徐々にこのような症状を来すのです。
アルツハイマー型認知症の特徴的な病変として、脳の萎縮により生じる脳老人斑と呼ばれるものが見られます。
この脳老人斑の成分であるアミロイドβ(Aβ)はタンパク質の一種で健康な人の脳にもありますが、通常であればそのまま分解・排出されます。
しかし、正常なAβより大きいと排出されず脳内に蓄積されます。
この蓄積されたAβは、記憶の役割を持つ脳細胞を死滅させると考えられています。
このAβは20数年という長い期間をかけ脳内に蓄積し、アルツハイマー型認知症を発症します。

認知症の診断方法として現在、長谷川式認知症スケールやミニメンタルステートなどの口頭での簡単な質問をする検査が行われています。
この他に、CTやMRIといった画像検査もあります。
これらの検査は医科にて行われていますが、歯科を受診した患者様で「入れ歯をよく紛失する」「予約日をいつも間違える」などの認知症の初期症状を疑い、医科へ紹介するケースもよくあります。

『歯周病とは・・・』

歯周病(歯槽膿漏)とは、口腔内の細菌感染によって歯茎が炎症を起こし、赤くなったり、腫れたりする病気の総称です。

歯周病が進行するとこのPg菌が口腔内の糖から酸を産出し、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かし、歯の動揺や歯ぐきからの出血や排膿といった症状を呈します。

口腔内には様々な細菌がいます。
歯周病の原因菌はこのうちの1つの菌である「Porphyromonas gingivalis(Pg菌)」です。

『研究結果』

このPg菌が認知症に強く関与しているのです。

今までの研究において、「Pg菌がAβ産生を誘発する」ということまでは分かっていました。
しかし今回の研究では、Pg菌はAβを作りやすくするだけではなく、全身に感染することで「Aβが脳内に取り込まれる」ということが解明されたのです。
研究内容としては、生理食塩水を投与したマウスとPg菌を3週間投与したマウスを用い、それぞれの脳に注目し比較します。
すると、Pg菌を投与したマウスの脳血管内皮細胞において、Aβと結合しAβを脳内へ取り込む役割を持つRAGEという受容体が2倍増加すると共に、周囲の脳実質内にAβが10倍増加し、記憶障害が誘発されたのです。
この研究から、歯周病とアルツハイマー型認知症との新たな関与メカニズムを示唆されました。
歯周病の予防・治療によりPg菌を体内から減らすことがアルツハイマー型認知症の発症・進行を遅らせることができることが分かり、口腔ケアによる認知症予防が大きく期待され始めています。
認知症の7割を占めるアルツハイマー型認知症には根本的な治療法が確立されていないため、発症を遅らせる方法の一つである「口腔ケア」は今後ますます、有効な予防手段として重要視されてくることと思います。

『口腔ケアの重要性』

歯周病は、認知症の他にも糖尿病、心筋伷塞、メタボリックシンドローム、誤嚥性肺炎などにも関連性があると言われています。
歯周病だけでなく、これらの全身疾患の予防のためにも早い段階での歯科医師や衛生士による定期検診・クリーニングが重要となってきます。
世間では未だ新型コロナウイルスへの不安が強いですが、私達もより一層の感染予防対策を行い患者様への診療に従事して参りますので、一緒に口腔及び全身疾患の予防をしていきましょう。

歯科医師 瀬津昂斗

参考文献:九州大学研究成果サイト
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/466
「臨床歯周病学 医歯薬出版 第二版」
「口腔内科学 永末書店 第二版」

 カテゴリ:未分類

コロナ禍での安全な歯科医療
~「クラスB」滅菌システム~

皆さま、こんにちは。
歯科衛生士の柏井伸子と申します。
私はインプラント治療を中心に、お口の中と外の感染管理をテーマに研究しています。
お口の中の感染管理では、インプラント周囲炎という、インプラントを支えている骨や歯ぐきへの感染による炎症の原因やその予防方法がテーマとしています。

また、お口の外の感染管理では、環境設定や使用後の器具器材の適切な滅菌について追求しております。
今回は、歯科治療で使用する器材を、いかに安全な状態で準備するかという点について皆さまへお伝えします。

昨年12月に中国・武漢で発生した呼吸器系感染症であるCOVID-19(CORONA Virus Infected Disease)の原因は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)という微生物の仲間のなかでも最も小さなウイルスの1つであることはご存知の通りです。

テレビドラマの中で、「DNA鑑定」という言葉を耳にされることがあるかと思います。DNA(deoxyribonucleic acid)はデオキシリボ核酸という遺伝情報がつまった物質です。
ウイルスも分裂・増殖するため遺伝情報が必要ですが、その遺伝情報を格納している物質は、DNA以外にもRNA(ribonucleic acid)リボ核酸があり、今回の新型コロナウイルスはこのRNAの外側に「カプシド」というタンパク質の層の外側を「エンベロープ」という脂質の膜が取り巻いています。
厄介なことに、エンベロープには「スパイク」と呼ばれる蛋白質でできた棘のようなものが飛び出しており、この棘が私たちの粘膜に引っかかり細胞に侵入します。
医療現場ではウイルスだけでなく、食中毒を引き起こす大腸菌や傷口を化膿させる緑膿菌などの細菌類にも対応しなければなりません。

では、どうすればこれらの病原性を有する微生物たちから私たちの身体を守ることができるのでしょうか?
最近では日常的に「消毒」という言葉を使うようになりました。
アルコールを手に擦り込むことで消毒ができるのは、アルコールには蛋白質を凝固・変性させる効果があり、微生物の活性を失わせて分裂・増殖できなくすることが可能となるからです。
しかし残念ながら「消毒」では、私たちに害を及ぼす微生物「にのみ」有効で、全ての微生物を殺滅するためには「滅菌」をしなければなりません。

つまり、「消毒」よりも「滅菌」のほうがレベルの高い処理であり、患者さんたちの安全性確保のためには、より高いレベルでの対応が求められます。

歯科医院における滅菌では、蒸気を活用した高圧蒸気滅菌法の原理に基づく滅菌器を用いています。
ひとくくりで滅菌器といっても、欧州の基準では”B”・”N”・”S”と、性能によりレベルが分かれており、それぞれ対象となるものが違います。

その中でもクラスB(Big Sterilization)と呼ばれる滅菌器は、大学病院等で用いられる大型滅菌器と同じ機能を搭載した卓上の滅菌器を示し、滅菌器の中の空気を外に追い出し、真空状態を作り出して蒸気を浸透させます。
A・B・Cというランク付けがあるのではありません。
クラスB滅菌器では、内部を134℃で2気圧という日常生活の環境とはかけ離れた状態にし、微生物のカラダを構成している蛋白質を熱で固め、分裂・増殖する能力を失わせる「不活性化」を行います。
ゆで卵や目玉焼きを作る時は、卵に熱を加えることにより卵を構成している蛋白質が熱変性するわけですが、滅菌器の中でも同じことを短時間で確実に実行するようにプログラムされています。

当院ではこのクラスB滅菌器を採用しており、外側はもちろん、内側の隅々までも安全なレベルに滅菌した医療用具を使用して治療させていただいております。
これからも質の高い滅菌により作り出される安全な歯科治療のために、スタッフが一丸となって対応を続けてまいります。

歯科衛生士
柏井伸子

 カテゴリ:未分類

口腔領域に発生する「血管腫」

皆さまいかがお過ごしですか。
新型コロナウイルス感染拡大予防のための休業、自粛要請が解除され、普通の生活に戻りつつある昨今ではありますが、まだまだ不安を感じながら生活されている方も多いのではないでしょうか。
6月15日から21日まで東京メトロ表参道駅のコンコースで、新型コロナウイルス感染症の治療にかかわる医療関係者への感謝を示すポートレート写真展が開催されました。
特定感染症指定医療機関として新型コロナウイルス感染症の治療に当たっている国立国際医療研究センター病院に勤める医師や看護師ら21人を写真家・宮本直孝さんが撮影したもので、治療の最前線に立つスタッフたちの緊張感、緊迫感が伝わり、私ども歯科医師も医療従事者として、通常通り使用する器材の滅菌消毒の徹底に加え、コロナ感染予防対策リストを作成厳守し、患者様、スタッフの安全に留意しつつ、微力ながらも皆さまの健康維持向上のために貢献させていただきたい…と改めて思いました。

ところで、今回は口腔領域に発生する「血管腫」について、少しお話しさせていただこうと思います。
「血管腫」は、血管組織由来の良性腫瘍であると教えられてきましたが、最近の研究では「腫瘍」と言えるものはその一部にしか過ぎず、ほとんどは発育異常であり、「血管奇形」という認識に変わってきています。

口腔領域での好発部位は舌、口唇、頬部などの軟組織ですが、顎骨内に発生することもあります。

大きさはさまざまで、表面の多くは暗赤紫色を伴い、やや隆起していることが多いのですが、腫瘤が深部にある場合は表層の色調に変化がみられないこともあります。
腫瘤は軟らかく、MRI、エコーなどの検査により診断します。
手指などで圧迫すると表面の色が退色し、また腫脹も消退しますが、圧をはなすと元の状態に戻る(被圧退縮)のが特徴といわれてきましたが、実際はこのようなものは多くはありません。

学生時代に習ったものと随分変わっており、医学が日進月歩のものであると実感します。
腫瘤が小さい場合、部位によっては経過観察となることもありますが、血管腫は徐々に大きくなることが多く、また誤って噛むことにより出血をきたす危険性があるため、積極的な治療をおこなうことも少なくありません。
治療法としては血管が集まった腫瘤へのアプローチですから、治療時の出血を最小限に止めなければなりません。

塞栓療法、凍結療法、硬化療法や摘出手術などが従来からおこなわれている治療法ですが、これらの処置は通常入院が必要であることに加え、再発、瘢痕による機能障害(口が開きにくくなる等)・審美障害(傷跡等)などの後遺症が課題となっていました。
しかし最近では、医療用レーザーの使用により最小限の外科的侵襲で治療出来るようになったため、外来での治療や、後遺症を最小限に抑えることが可能になりました。

【レーザー照射による治療例】

(上記症例写真は丸岡豊先生のご厚意により掲載させていただいております。)

この口腔領域の血管腫のレーザー治療は2018年に国立国際医療研究センター病院歯科・口腔外科 診療科長 丸岡 豊先生(現 同センター副病院長)らのご尽力により、保険治療に収載されたため、費用面でも治療が受けやすくなりました。
血管腫(血管奇形)治療の詳細についてはこちらの記事をご参照ください
血管腫(血管奇形)治療の詳細)。

新型コロナウイルスの研究・治療で一躍注目を集めた国立国際医療研究センター病院ですが、丸岡先生を始めとする多くの優秀な医療スタッフを擁し、国立高度専門医療研究センターの1つとして、全科通じ診療と研究を統合した高度医療を提供している素晴らしい総合病院でもあるのです。

当診療所は国立国際医療研究センター病院の他にも近隣大学病院や総合病院との病診連携をとり、万全の体制で患者様の診療に臨んでおりますので、口腔領域のお悩みがある方は、いつでも安心してご相談ください。
お口を通して皆様の健康管理に寄与出来ましたら幸いです。

本記事の作成に関しましては、国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科診療科長の丸岡 豊先生、並びに株式会社メディカルノート様に多大なるご協力をいただきました。記して御礼申し上げます。

歯科医師 竹屋江美

 カテゴリ:未分類

第三の歯とよばれるインプラント治療

皆さま、こんにちは。新型コロナウイルスの予防に引き続き、こまめに水分補給を心掛けて熱中症にもお気をつけください。
マスクをつけていると体内に熱がこもりやすく、のどの渇きを感じづらくなり、脱水が進みやすくなりますので経口補水液などもおすすめです。
さて、皆さまは第三の歯とよばれるインプラント治療をご存じでしょうか。

近年、インプラント治療について患者様の認知や関心が高まっており多くの歯科医院でインプラント手術が行われています。
入れ歯以外の選択肢として「インプラント治療」が周知され歯科衛生士は術前から術後まで広く携わります。
患者様の健康をサポートしていく立場にある歯科衛生士は、インプラントと天然歯を長期に共存させていくために、多くの知識を学ぶ必要があります。
今回は歯科衛生士がインプラント治療にどのように携わるかについてご紹介させていただきます。

インプラント手術前に行っておく口腔内の環境整備とは?

インプラント手術が行われる日までに、患者様の口腔内の状態を整えておくことが大切です。

① プラークコントロール
② 保存不可能歯の抜歯
③ スケーリングやルートプレーニングによる炎症のコントロール
④ むし歯、感染根管および根尖病巣の処置
⑤ 揺れている歯の固定
⑥ 咬み合わせの調整

などが術前の初期治療として行われます。
術前の口腔内環境整備では、歯科医師と歯科衛生士のチームワークが求められます。
術前の口腔内環境が整ったらいよいよインプラントの埋入になりますが、術中も気をつけることがたくさんあります。

「清潔域と不潔域の理解が非常に大切!」

インプラント手術において「感染」はもっとも避けなければいけない偶発事故の一つです。
術部が感染すると、場合によっては移植骨やインプラントを撤去しなければなるので無菌的な手術が不可欠になります。
清潔域にある器具は使用終了まで清潔域にとどめ、不潔域から清潔域に器具は移動することは絶対に避ける必要があります。

歯科衛生士に求められる患者様への配慮とは?

① 適度にお声がけをして不安を取り除く
② バイタルサインの変化を見逃さない(血圧・脈拍・血中酸素飽和度の変化)
③ 器具を落とすなど、大きな音をたてるようなことをしない
④ 口腔内に変化を生じるときは必ず声をかける(注水時、術野の確保時)
⑤ 口角炎を予防する➡術中は生理食塩水で湿らせておくと口角炎の予防に◎
⑥ 我慢していることはないかの確認をする(疼痛等)

術者がより手術に集中できるよう、歯科衛生士も血圧計、パルスオキシメーターの数値を確認する習慣をもち、患者様の体調の変化を察知できるようにしなければなりません。

インプラントはメインテナンスで予後か決まる!

インプラント治療完了後、とても重要なのが、その後のメインテナンスです。
メインテナンスを怠るとインプラント周囲の歯肉や骨といった組織が炎症を起こすこともあります。
インプラント周囲粘膜炎の早期発見・治療にためにも定期的なケアが必要になります。

インプラント周囲組織と歯周組織の相違点としては

① 結合組織中のコラーゲン含有量が多く、線維芽細胞の量が少ない
② 血液配給量が少ない
③ コラーゲン繊維の走行が違う

が挙げられます。
そのためインプラント周囲組織に炎症が起こると、急速に不可逆的に進行すると考えられています。
そのためメインテナンスの際に、私たち歯科衛生士がいかにインプラント周囲粘膜の正常・異常を診られるかが重要であります。
インプラントのメインテナンスの際は全身的なリスクファクター(循環器系疾患・代謝性疾患・骨粗しょう症等)と局所的リスクファクター(コントロールされていない歯周炎・異常咬合習癖)を把握する必要があります。
喫煙がオッセオインテグレーションを(インプラント体の素材であるチタンが骨に結合すること)を阻害したり、非喫煙患者様に比べて大きなリスクになることを説明して禁煙指導をおこなう必要があります。
禁煙できない場合はリコール間隔を短くするなどの対処が必要となります。

インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の違いって何?

インプラント周囲粘膜に限局した可逆的な炎症をインプラント周囲粘膜炎と定義します。
また、インプラントに細菌感染や過重負担がかかり炎症が深部に進行し、インプラント周囲骨の吸収を引き起こす炎症性病変がインプラント周囲炎と定義されています。

最後に・・・

私たち歯科衛生士は皆さまに安心してインプラント治療をうけていただけるよう日々研鎖を積みながら診療にあたらせていただいております。
インプラントのケア、それ以外の口腔ケアについてもお気軽にご相談いただければと思います。

歯科衛生士
永田 奈緒

参考文献
中山かおり(2010)『これでバッチリ!インプラント治療のアシスタントワーク上巻』
(クインテッセンス出版株式会社)
岩崎美和(2011)『DHが行うインプラントメインテナンスのスタンダード』
(デンタルダイアモンド社)

 カテゴリ:未分類

L 8020 乳酸菌でむし歯、歯周病を予防する!

今年はコロナウィルスの蔓延で、我々の日常生活にも大きな影響がありましたね。
気が付けばもう一年の半分が経過しておりました。
もうすぐ夏ですよ!皆様、元気にお過ごしでしょうか?

在宅ワークが増えたことで、運動不足気味の方も多いのではないでしょうか?
緊急事態宣言の時など、私の唯一の楽しみがウォーキング、スーパーやドラッグストアへの買い出しでした。
個人的にサプリメントのコーナーは興味大でして、その中でも良く目にしたのは善玉菌、腸内環境をよくする菌...云々のフレーズでした。
そういえば、世の中なんと多くの善玉菌関連の食品やサプリメントが多いことか!大半はお通じを良くしたり、肥満解消などが目的とされているようですね。

今回は、口腔内の環境を改善する乳酸菌のお話しをしたいと思います。

口腔内には 700~800 種類の微生物が存在するとされています。
腸と同じように、菌のコロニーである「口腔内フローラ」があります。
その中には乳酸菌のような善玉菌もいれば悪玉菌もいます。

悪玉菌の代表格が、歯周病を引き起こす Porphyromonas gingivalis (ジンジバリス菌)。むし歯の原因菌 mutans streptococci (ミュータンス菌)などです。
ジンジバリスは歯と歯肉の隙間に付着した食べかす=プラーク(歯垢)を好み、プラークの中で次第にコロニーを形成していきます。
プラーク中にはミュータンス菌も存在します。

歯や歯肉の隙間に付着したこれらのプラークは、歯磨きで予防することはある程度できますが、一度歯周病にかかってしまったり、むし歯ができてしまった後では病原菌を歯ブラシだけで除去することは難しくなります。

これまで病原菌は、Antibiotics (抗生物質)で殺菌するという考え方が主流でした。
近年それに対し、Probiotics (プロバイオティクス)で悪玉菌を退治するという方法が考えられてきました。

このプロバイオティクスとは「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」と定義されています。
プロバイオティクスの候補としては乳酸菌やビフィズス菌、オリゴ糖類などがあげられます。
益虫と同じで、作用は穏やかながら、環境への害はほとんどなく、人体への副作用もないなどの利点があげられます。

L 8020 乳酸菌の発見!

広島大学大学院医系科学研究科 口腔生物工学研究室の二川浩樹教授により、口腔内の病原菌に対して、作用する善玉菌が発見されました。
正式名称はラクトバチルス・ラムノーザス k03 株という菌種ですが、「8020 運動」にちなんでL 8020 と名付けられました。
L 8020 は歯周病やむし歯に罹患したことのない健康な子どもの口腔内から発見されたヒト由来の乳酸菌だそうです。
むし歯菌や歯周病菌の数を抑制するという抗菌作用があります。
二川先生はこのL 8020 乳酸菌の入った試作のヨーグルトを用いて実験を行ったところ、5 種類の歯周病菌とむし歯菌、さらにはカンジダ菌にも抗菌効果があることを証明しました。
二川先生の発見したL 8020 について詳しい解説は以下のウェッブサイトをご覧ください。

https://www.l8020.jp/

L 8020 菌を使用した商品も数多く揃っているようです。
私は是非ヨーグルトを試してみたいと思います。

http://www.campusmedico.jp/l8020/products/index.html

最後に、このような善玉菌を含む食品を毎日の習慣に取り入れることによって、むし歯や歯周病を抑制できるなんてありがたいことですよね。
口腔内の環境を良くすることによって、さらには全身の健康状態も良くなるのですから取り入れてみて損はないような気がします。

特に、むし歯になりやすいあるいは歯周病が気になるという方にはお勧めの予防方法だと思います。
もちろん、毎日の丁寧な歯磨きと歯医者さんでの定期的なメインテナンスは欠かせないんですけどね。

歯科医師 大庭美和子

 カテゴリ:未分類

口腔機能低下症とは

こんにちは、皆様いかがお過ごしでしょうか?
新型コロナウィルスの世界的なパンデミックにより、自粛生活を余儀なくされているかと思います。
そんな中でも、食べるという行為は健康を維持する上でとても大切で、楽しみの一つでもあるかと思います。

お食事をおいしく、楽しく召し上がって頂くためにも、お口の健康は必要不可欠になってくるかと思います。

さて、少し前になりますが、2020/01/29にNHKの今日のおはよう日本の7時台のニュースで「口腔機能低下症」にて特集されました。

老年歯科学会の基準によると、口腔機能低下症とは、、、加齢だけでなく、疾患や障害など様々な要因に よって口腔の機能が複合的に低下している疾患、と定義されています。
では、具体的なお口の機能とはどのようなものかといいますと、、、

お口の機能は、以下の大きく5つに分類されます。

咀嚼(そしゃく):食べた物を「噛む」機能。
嚥下(えんげ):食べ物や飲み物、唾液などを「飲み込む」機能。
構音(こうおん):舌や唇を使って「言葉を作る」機能。
唾液(だえき):食事や口腔内の清潔のために「唾液を分泌する」機能。
感覚(かんかく):食事や発声のために、口腔内の状態を感じて理解する機能。

これらの機能が綿密に組み合わさって「食べる」「話す」という活動につながっています。
加齢などの影響で、どれかひとつの機能がうまく動かなくなると、徐々に他の機能にも影響していくため、注意する必要があります。
以下の図は「5つの機能」と、それぞれが衰えた時に影響する口腔機能の低下を示したものです。

歯科医院で口腔機能低下症かどうかを検査する方法としては、いくつか種類があります。
代表的な検査方法を数種類紹介したいと思います。

・口腔衛生状態不良の検査

舌苔付着度 TCI(Toung Coating Index):視診で舌の汚れの範囲を検査します。

・口腔乾燥の検査

サクソンテスト:乾燥したガーゼを2分間咬み、唾液をガーゼと ともに一塊に回収する。
重量を測定し、増加 重量を唾液量とするし、2g/2分以下の場合、口腔乾燥ありと判定

・咬合力低下の検査

感圧フィルムによる咬合力の測定:特殊なフィルムを咬んでいただき、そのフィルムを機械で読み取り、咬合力を測定するもの

・咀嚼機能低下計測

グルコセンサー:特殊なグミを一定時間咬んでもらい、咀嚼機能を測定する

この他にも、口唇や舌の運動の機能をはかる検査や、嚥下機能を評価する検査など多岐にわたります。
全ての検査を実施するわけではありませんが、その中の必要とされる検査を実施し、一定の評価基準に満たない場合は口腔機能不全症と診断します。

ここで、口腔機能低下症とあわせてオーラルフレイルという言葉があります。
オーラルフレイルは、わずかなむせや食べこぼし、滑舌の 低下といった口腔機能が低下した状態を示すもので、いわゆる(キャッチフレーズ)として使用されています。

オーラルフレイルはいくつかの段階を踏んで進行していきます。
まず、口腔機能への関心が低下して、むし歯や歯周病などになり、歯が抜けたり痛みが出てきます。
すると、口腔機能が低下して、会話や食事に不具合が出るようになり、食欲が低下したり、日常の活動範囲が狭くなったりします。
噛む力や舌の筋力が衰えれば、食べる量も低下して、低栄養の状態になりますし、会話が減れば社会的に孤立していきます。
さらに機能が低下すると、咀嚼や嚥下に障害が起こり、要介護の状態になってしまうこともあるのです。

次のような自覚症状があるときには、要注意です。

1.奥歯でしっかりと噛めない
2.噛むと痛んだり不快感がある
3.食べこぼしがある
4.むせやすい
5.口が乾燥しやすい
6.滑舌が悪くなっている

1つでも当てはまったら、歯科を受診して、口腔ケアや口腔リハビリで改善しましょう。

歯科医師 福島 歩

 カテゴリ:未分類