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最近の高齢者のお口の変化~
8020は既に達成?!

30度越えの暑い暑い夏がようやく終わり、台風騒動の後、あっという間に11月になりましたね。
季節は秋です。
目まぐるしい気候の変化についていけず、体調を崩される方も多いのではないでしょうか。
季節の変わり目には自律神経のバランスが変化するために様々な体の不調が出やすく、もちろんお口の中のトラブルも発生しやすくなっています。

普段は何でもなかった歯茎が突然痛み出し腫れてしまったり、物を噛んだ時に痛みを感じたりなどのお口の中の不調は耐え難いものがあります。
こうした不調のサインにいち早く気付き、勇気を持って歯科医院へ行き、原因を知り、早めに治療を受けることは長い人生を健康に生きていくためには非常に重要なことです。

今回は、すでに多くの方がご存知じかと思われますが、8020 「ハチマルニイマル」運動についてお話します。

8020運動は、ざっくばらんに言いますと、“80歳になっても20本以上自分の歯を保ちましょう!”という標語を元にした様々な取り組みのことを言います。
1989年に当時の厚生省が成人歯科保健対策検討会で提唱したのがそもそもの始まりで、その後普及のための様々な取り組みが行われてきました。

平成29年6月2日に厚生労働省の発表によると、8020達成者(80歳で20本以上の歯が残っている人の割合)は51.2%であり、平成23年の調査結果40.2%から増加していることが明らかになりました。
つまり、80歳で8020を達成された方が2人に1人以上となり、過去最高記録を達成したことになります。

出典: 厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査

この結果は、我々歯科医療従事者のみならずまた日本国民にとっても、とても喜ばしいことであります。
また日本国民の口腔ケアへの意識が高まったことを意味します。

高齢者が生涯、いつまでも「いきいき」と暮らしていくためには、なるべく多くの歯でしっかり噛み、充実した食生活を送ることが重要です。
よく噛むことにより、脳の血流が増え、脳神経細胞のはたらきが活発になり、認知症の予防にもつながり、想像以上に良い影響を及ぼします。

高齢者の口腔内は加齢的変化により様々な問題が発生します。

高齢者のお口の中の変化には以下のような現象が挙げられます。
唾液分泌量の減少による自浄作用の低下および口腔内の乾燥(ドライマウス)。
舌や口腔粘膜の状態の変化による口臭の発生、味覚の変化。
歯と、歯周組織にも変化が起こります。
歯と歯肉の境目がクサビ状に擦り減ったり、歯肉が退縮したことにより露出した根面にむし歯ができやすくなるなど。
またさらに、治療後の詰め物や入れ歯が合わなくなってしまうなどです。

高齢になると、歯や歯肉のトラブルばかりでなく、嚥下機能の低下などの飲み込む機能にも問題が発生します。

食べ物や飲み物が食道ではなく気道に入ってしまい、細菌が肺で繁殖して起こるのが「誤嚥性肺炎」です。口腔内の歯周病原菌が唾液とともに呼吸器に流れ込むことによって引き起こされる肺炎です。
日本人の死因原因の第三位にもなっています。恐ろしいですね。

その他にも、糖尿病、心疾患、アルツハイマー、関節性リウマチなど、歯周病と関連のある全身疾患もいくつかあります。

今後の課題

全ての年齢層に言えることですが、しっかりと口腔ケアをすることにより、口腔内の環境が整い、快適な毎日を送ることができるようになります。
さらに健康体の高齢者が増えることによって、介護予防にも大きく貢献します。
今後の超高齢者社会において、歯科医療がどのようにかかわっていくかは我々歯科医師にとって大きな課題の一つです。

高齢者のお口の中により多くの歯が残される様になったことは素晴らしいことですが、さらなる取り組みが必要となります。

ただ単に歯の数が多ければ良い訳ではありません。いかに良い状態で残されているかが重要になってきます。
その為にも、歯科医院だけでの口腔ケアでは追い付かず、病院や、在宅、または高齢者向け施設での連携したケアシステムの充実が今後の課題になると思われます。

歯科医師 大庭美和子

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